その他

「桔梗チャンなんかと会わせなければよかった」


ポツリと呟き、無防備に昼寝をしている相手をじっと眺め、軽くその紅い髪に触れた。


「そうすれば、君はいつまでも僕のモノだったのにね?」


起こさないように、ゆるやかに癖のある髪を指に絡める。
別に、相手の心が今は自分以外を見ているわけではないと分かってはいる。
ただ、失敗だと思ったのは、あの自分に忠実な部下が彼に思いを寄せてしまったこと。

「君って絆されやすいんだよね、たしか……」

優しくされるのに慣れていない彼の事だ、きっと、あの物腰柔らかな部下に気を許す。
その先は……考えたくもない。


「あーあ、失敗したなー」

いつまでも、自分だけのモノにしたかった。
例えるなら、大切な玩具を他人に見せたくない子供の心境。


「……今のうちに既成事実でも作っちゃおうかな?」


軽く考え、やはりダメだと自分の考えを否定した。
命令といえばすぐにでも受け入れるだろうが、自分を見る瞳に僅かな畏怖も入って欲しくない。
恋ではないけれど今の彼は、自分を尊敬し、敬愛している。

尊敬は恋にも勝る時があると、何処かで聞いたことがある。
できれば、その言葉が事実であって欲しいと、あやふやな出所不明の言葉だけれど、願ってしまった。


「…………白蘭様?」
「起こしちゃった? ザクロ君」



独り占め
せめて、今だけはこの瞳を独占したい。


end
(2010/07/25)
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