その他
朝は、ザクロを起こしに行く事から始まる。
「ハハン、毎日困ったものですね」
ひっそりと足音を立てずに歩く桔梗は、困ったものですと言いながら、顔は綻んでいた。
足音を立てない理由は、他の者を起こさないための配慮……ではなく、ただ一番にザクロに会いたいがため。
「入りますよ、ザクロ」
小さくノックをし、鍵の掛けられていない扉をザクロの返事を聞くまでもなく桔梗は開け放った。
「……何をしているのでしょうか?」
ザクロの寝室へと来た桔梗は、嫣然と微笑みながら、冷ややかに先客達を見た。
「ニュ、なによ桔梗もう来たの~?」
「……今日は、僕チンがザクロ起こしたかったのに」
「アハハ! 桔梗チャン毎日大変でしょ? 今日からは僕がザクロ君を起こしてあげるよ」
まずはザクロの寝顔を堪能していた面々は、桔梗が来た事を歓迎する事はなかった。
そんな中で、まだ堂々と寝ているザクロは、周囲にある危険をまったく察知していない様子だった。
「ハハン、白蘭様、ミルフィオーレに行かず、此方に毎日来るのは大変かと思いますので来なくて構いません。それから、ブルーベルは女の子なのですから、殿方の寝室には入らないようにしましょう」
「……ザクロ、起き…ぼばっ!?」
「デイジーは、少し黙っていましょうね?」
「うわ~、桔梗チャン大人気ないねー」
ザクロを起こそうとしたデイジーを、冷笑を湛えながら匣兵器で拘束した桔梗は、泡をふいているデイジーをザクロから遠ざけた。
相変わらずの敵の多さに、油断も隙もありませんねと桔梗は舌打ちをしたい気分だった。
もっとも、例え敵が同僚であろうが上司であろうが、諦めると言う気持ちは毛頭なかった。
「ニュ~、ザクロかわいい」
一連の会話を、まったくと言って良いほど無視をしていたブルーベルは、一人ザクロの寝顔を眺め呟いた。
男に可愛い言うこと自体問題があるように感じるが、その場にいる面々にとって、ザクロに対してならば通用する。
むしろ、日常でのクールな様でだまされ易いその様子すら微笑ましく、可愛いと思えるほどだった。
起こそうと言う意思は何処へ行ったのかと思うほど、一同ザクロの寝顔を見入った。
「………………起床の時」
部屋の隅でひっそりと立っていたトリカブトの声により、いち早く我に返った桔梗は、ザクロの肩に手を添え、揺すった。
「ハハン、起きてください、ザクロ」
「ニュッ! 桔梗ずるい! ブルーベルがザクロを起こすのに!!」
「きょ、今日は僕チンだよぉ!」
「ザクロ君は僕が起こすって言ったのに」
耳元での大音量の声。
桔梗に肩を揺すられた事もあり、ザクロは呻きながら寝ぼけ眼を開けた。
「うぃ~……あー、朝かばーろー?」
盛大に欠伸をしながら、上半身を起こしたザクロは、肩に手をかけていた桔梗を見上げた。
「ハハン、おはようございます」
「毎日わりーな」
「かまいませんよ」
「ズルイ! ブルーベルは激しくブロークンハートよ!!」
「ぼ、僕チンが起こそうと思ったのに……」
「桔梗チャン、給料カットしちゃうよ?」
三者三様にその顔を、怒り、泣き、笑いの表情に変えながら桔梗を睨んだ。
寝起きで周囲を気にかけていなかったザクロは、意外と近くにいた3人を見て驚いた。
「白蘭様……何でいるんですか?」
「酷いよザクロ君、僕がいちゃいけないの?」
「いえ……ただ、珍しかっただけで」
ザクロの言葉に傷ついたかのように、憂い気に問い返した白蘭。
その様子に、言葉に詰まりながら返答したザクロだったが、何故いるのかと疑問は残ったままだった。
「桔梗、俺の着替えくれ」
上司のいる前で、いつまでも寝巻では示しがつかないと、頭を切り替えたザクロは、ベッドから下りながら、桔梗へと頼み掛けた。
「……今、着替える積りですか」
「当たり前だろバーロー」
「いけません。貴方は此処で着替えるつもりですね?」
「それ以外何処で着替えるってんだ?」
何か問題があるかと、問う様に首を傾げるザクロは、期待した目で白蘭達が自分を見ている事に気がついていなかった。
「せめて、肌を隠しながら着替えてください」
「ああ? んなみみっちいまね誰がするかバーロー、男が着替えるのに何処に恥ずかしがる必要があるってんだ?」
堂々と寝巻を脱ぎながら、周りがどんな目で自分を見ているか気がつかないザクロは。
なかなか着替えを寄越さない桔梗に対し憤りを覚えた。
「とにかく、いけません」
「うぉッ、何だバーロォ!?」
冷静に言い放った桔梗は、バサリとシーツをザクロへと被せ。
邪な目で見る者達からその肌を隠し、自分の方へとザクロを引き寄せた。
「ブー! なんで見せてくれないのよ!」
「そうだよ桔梗チャン、ザクロ君がせっかく見せてくれるって言うのに!」
「ハハン、何と言われようと、見せませんよ」
抗議する相手との間にバチバチと火花を散らしながら、敵が多いのも困りものだと、桔梗は頭を痛くした。
競争率は高い
守るのも一苦労の日々
end
(2010/07/10)
ナナ子様リク『ザクロ総受け』
「ハハン、毎日困ったものですね」
ひっそりと足音を立てずに歩く桔梗は、困ったものですと言いながら、顔は綻んでいた。
足音を立てない理由は、他の者を起こさないための配慮……ではなく、ただ一番にザクロに会いたいがため。
「入りますよ、ザクロ」
小さくノックをし、鍵の掛けられていない扉をザクロの返事を聞くまでもなく桔梗は開け放った。
「……何をしているのでしょうか?」
ザクロの寝室へと来た桔梗は、嫣然と微笑みながら、冷ややかに先客達を見た。
「ニュ、なによ桔梗もう来たの~?」
「……今日は、僕チンがザクロ起こしたかったのに」
「アハハ! 桔梗チャン毎日大変でしょ? 今日からは僕がザクロ君を起こしてあげるよ」
まずはザクロの寝顔を堪能していた面々は、桔梗が来た事を歓迎する事はなかった。
そんな中で、まだ堂々と寝ているザクロは、周囲にある危険をまったく察知していない様子だった。
「ハハン、白蘭様、ミルフィオーレに行かず、此方に毎日来るのは大変かと思いますので来なくて構いません。それから、ブルーベルは女の子なのですから、殿方の寝室には入らないようにしましょう」
「……ザクロ、起き…ぼばっ!?」
「デイジーは、少し黙っていましょうね?」
「うわ~、桔梗チャン大人気ないねー」
ザクロを起こそうとしたデイジーを、冷笑を湛えながら匣兵器で拘束した桔梗は、泡をふいているデイジーをザクロから遠ざけた。
相変わらずの敵の多さに、油断も隙もありませんねと桔梗は舌打ちをしたい気分だった。
もっとも、例え敵が同僚であろうが上司であろうが、諦めると言う気持ちは毛頭なかった。
「ニュ~、ザクロかわいい」
一連の会話を、まったくと言って良いほど無視をしていたブルーベルは、一人ザクロの寝顔を眺め呟いた。
男に可愛い言うこと自体問題があるように感じるが、その場にいる面々にとって、ザクロに対してならば通用する。
むしろ、日常でのクールな様でだまされ易いその様子すら微笑ましく、可愛いと思えるほどだった。
起こそうと言う意思は何処へ行ったのかと思うほど、一同ザクロの寝顔を見入った。
「………………起床の時」
部屋の隅でひっそりと立っていたトリカブトの声により、いち早く我に返った桔梗は、ザクロの肩に手を添え、揺すった。
「ハハン、起きてください、ザクロ」
「ニュッ! 桔梗ずるい! ブルーベルがザクロを起こすのに!!」
「きょ、今日は僕チンだよぉ!」
「ザクロ君は僕が起こすって言ったのに」
耳元での大音量の声。
桔梗に肩を揺すられた事もあり、ザクロは呻きながら寝ぼけ眼を開けた。
「うぃ~……あー、朝かばーろー?」
盛大に欠伸をしながら、上半身を起こしたザクロは、肩に手をかけていた桔梗を見上げた。
「ハハン、おはようございます」
「毎日わりーな」
「かまいませんよ」
「ズルイ! ブルーベルは激しくブロークンハートよ!!」
「ぼ、僕チンが起こそうと思ったのに……」
「桔梗チャン、給料カットしちゃうよ?」
三者三様にその顔を、怒り、泣き、笑いの表情に変えながら桔梗を睨んだ。
寝起きで周囲を気にかけていなかったザクロは、意外と近くにいた3人を見て驚いた。
「白蘭様……何でいるんですか?」
「酷いよザクロ君、僕がいちゃいけないの?」
「いえ……ただ、珍しかっただけで」
ザクロの言葉に傷ついたかのように、憂い気に問い返した白蘭。
その様子に、言葉に詰まりながら返答したザクロだったが、何故いるのかと疑問は残ったままだった。
「桔梗、俺の着替えくれ」
上司のいる前で、いつまでも寝巻では示しがつかないと、頭を切り替えたザクロは、ベッドから下りながら、桔梗へと頼み掛けた。
「……今、着替える積りですか」
「当たり前だろバーロー」
「いけません。貴方は此処で着替えるつもりですね?」
「それ以外何処で着替えるってんだ?」
何か問題があるかと、問う様に首を傾げるザクロは、期待した目で白蘭達が自分を見ている事に気がついていなかった。
「せめて、肌を隠しながら着替えてください」
「ああ? んなみみっちいまね誰がするかバーロー、男が着替えるのに何処に恥ずかしがる必要があるってんだ?」
堂々と寝巻を脱ぎながら、周りがどんな目で自分を見ているか気がつかないザクロは。
なかなか着替えを寄越さない桔梗に対し憤りを覚えた。
「とにかく、いけません」
「うぉッ、何だバーロォ!?」
冷静に言い放った桔梗は、バサリとシーツをザクロへと被せ。
邪な目で見る者達からその肌を隠し、自分の方へとザクロを引き寄せた。
「ブー! なんで見せてくれないのよ!」
「そうだよ桔梗チャン、ザクロ君がせっかく見せてくれるって言うのに!」
「ハハン、何と言われようと、見せませんよ」
抗議する相手との間にバチバチと火花を散らしながら、敵が多いのも困りものだと、桔梗は頭を痛くした。
競争率は高い
守るのも一苦労の日々
end
(2010/07/10)
ナナ子様リク『ザクロ総受け』