その他

「先に入るぜバーロー?」

部屋にいる全員に聞くように、振り返りながらザクロは声をかけた。

「ハハン、どうぞ」
「ぼっ、僕チンは後で良いよ……」
「ブルーベルは別のお風呂だもーん」

本から目を離さずに答える桔梗。
ぬいぐるみを抱えながら挙動不審に言葉を返したデイジー。
生意気そうにソファーに横になりながら、バカにする様に言うブルーベル。

「じゃ、先に入るぜ」

反応の薄さはいつもの事だと割り切り、部屋を出ながら手だけひらひらと振った。


「ちょっとびゃくらんの所に行ってくる」

ザクロが出て行ってから、少し時間が経ったころ、ブルーベルが断りをいれてパタパタと部屋を出て行った。

「僕チン飲み物持ってくる……」

ブルーベルの後を追うように、デイジーも早歩きで部屋を出て行った。
残された桔梗は、読んでいた本をパタリと閉じながら静かにつぶやいた。

「ハハン……甘いですね」

本を机の上に置き、同じように部屋を後にした。


「何で桔梗が先にいるの!?」
「後からだったよね……?」
「おや、二人ともそれぞれの用事はどうしましたか?」

ニッコリと微笑みかけながら桔梗はブルーベルとデイジーを迎えた。

「と、とにかく、先に見るのはブルーベルよ!」

怒ったように頬を染め、桔梗がいる場所へとズンズンと歩いていくブルーベル。
デイジーも慌てた様にブルーベルの後をついていった。

「ブルーベル、もっと詰めてよ……」
「何よ! デイジーが邪魔なのよ!」
「いっ、痛いよ」

それほど大きく無い窓を覗き込む二人。
ブルーベルはデイジーの髪を掴みながら怒っていた。

「ハハン、静かにしないと、気付かれてしまいますよ?」

桔梗の言葉に、口に手を当てて静かになった2人は、ゆっくりと窓を覗き込んだ。


「うぃ~、気持ち良いぜバーロー」

頭に手ぬぐいをのせ、のんびりと湯につかるザクロ。
上気した肌は無防備に曝されていた。

「ニュー! 湯気じゃま!!」
「い、痛いんだけど、ブルーベル……」

デイジーの髪を掴んだまま、よく見ようと身を乗りだすブルーベル。

「ハハン、落ちてしまいますよ?」

そんなブルーベルを手で制しながら、桔梗はザクロから目を離していなかった。



「あれ、みんなは?」

トリカブトだけ残された部屋へと入って来た白蘭は不思議そうに聞いた。

「……趣味の時」
「ああ、ザクロ君の入浴の覗き見かー、僕も行こうかな?」



趣味の時間
『……何で風呂に入ってて寒気がするんだバーロー?』


end
(2010/02/20)
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