桔ザク

目の前にある、綺麗に赤く色づく軟らかいものを無造作にかき混ぜる。
ぐちゃぐちゃと音のするソレを冷静に見ていた。


「意外だなバーロー」
「何がですか?」
「お前ならさぞ、お綺麗に食べるんだと思ってたぜ」
「……ハハン、これの事ですか」

綺麗に盛り付けられていた赤と白のジェラートは、見る影も無いほど、ぐちゃぐちゃに混ぜられていた。


「食べる気がしなかったので、つい」
「それでも珍しいぜバーロー」

本当に意外そうな顔をするザクロ。


「ハハン、私にも、たまにはこんな事ぐらいありますよ」


混ぜられてピンク色になってしまった溶けかけのジェラートをすくい取り、ザクロの口もとへと向ける。

「いりますか?」
「バーロー、もったいない事しやがって」


文句を言いながら、溶けかけのジェラートを口へと含む。


「甘ったりーぜ、バーロー」
「ハハン、そう言うものですよ」



溶けたものほど甘いものは無い
「もう一口いかがですか?」
「バーローもういらねえよ」


end
(2010/01/13)
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