桔ザク 2

鈍い音と共に、頬にくっきりと手形が付いた。
叩かれた頬に手を当て、叩いた相手を唖然としながら見た。

「酷いよザクロ君!」
「びゃ、白蘭様?」
「ザクロ君なんか嫌いだ!!」
「ッ!?」

白蘭からの言葉にショックを受け、頬の痛みも忘れそうになった。

「桔梗! 聞いてくれバァロォオ!!」

扉を蹴破る勢いで開けて入ってくるザクロを見ながら、桔梗はニッコリと笑った。

「ハハン、何があったのですかザクロ?」
「白蘭様が、白蘭様がよぉッ…!!」
「とりあえず落ち着きましょう。それから、早めにその頬を冷やさないといけませんね」
「んな事はいいから聞け!!」

最後は脅すように桔梗の胸倉を掴むザクロ。
メンチを切るザクロに対し、ため息をついてから桔梗はそっと手を外させた。

「で、何があったのですか?」
「急に白蘭様に怒られたんだバーロォ……」

涙を滲ませながら、くっ、と唇を噛んだザクロは鼻をすすりあげた。

「その手形は白蘭様からでしたか……」
「何で怒られたんだバーロー」
「私にその理由を訊かれましても、答えようがありませんよ?」

感情が高ぶっているザクロに優しく対応する桔梗は、手早く手当ての道具を揃え始めた。

桔梗の用意した氷水を頬に当て。
手当てを受けている間に落ち着きを取り戻したザクロは、ため息を付くように言い始めた。

「可笑しいぜバーロォ。お前と白蘭様の恋をサポートしてただけだぜ?」
「……ザクロ。本人の前で言っては意味がないと思いますよ」
「あ? 何がだ?」
「それから……よく自分の恋人と他人との恋をサポートする気になりましたね」
「バーロー、白蘭様には幸せになって欲しいもんだろ?」

さも当然と言い切るザクロは、何を疑問に思うのかと問い返すように桔梗を見上げた。
呆れる以前に悲しくなってきた桔梗は、泣きたい気持ちを抑えながら口を開いた。

「ハハン、その意見には全面的に賛成ですが、貴方はもう少し自分の立場を考えましょう」



物も言えない
「何で白蘭様に怒られたんだバーロォ……」
「疑問に思う貴方に逆に私は質問したいですよ。ザクロ」


end
(2011/02/25)
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