桔ザク 2
「バーロォ! テメェのせいだ!!」
「ハハンッ、唐突に何ですかザクロ? あと、危険なので嵐の炎を所構わず出さないでください」
ザクロの炎を防ぎながら問いかける桔梗は、部屋に入る早々に怒鳴られ、理由がわからず眉を寄せた。
「テメーなんかと一生寝床共にしねぇ!!」
「ザクロ……寝言は寝てから言ってください」
弦でザクロの体を拘束した桔梗は、床に転がしたザクロへと近づいた。
「何があったのですか?」
「うるせぇ!」
ザクロは桔梗を睨みながら怒鳴り付けた。
何を理由に怒っているのかと首を傾げながら、桔梗はザクロに問いかけた。
「取り敢えず、もう暴れませんか?」
「ああ? さっさと解け。この手でテメーに制裁を与えてやる」
「ハハン……では、もう暫くこのままですね」
「解け!」
噛み付かんばかりに抗議するザクロをよそに、理不尽ですね、と桔梗はため息をついた。
仮にも恋人に、原因もわからず喧嘩を吹っかけられれば、誰でも少なからず悲しい。
特に、連日愛を確かめ合っている中では。
「お前のせいで白蘭様に任務外されたんだぞ!!」
ザクロが叫んだ言葉に考え事を止めた桔梗は、何となく理由がわかった。
「ハハンッ、寝不足が原因で外された件ですか?」
「そうだバーロォ!」
「そんなに私と任務に行きたかったのですか?」
「誰がだ!! 俺は白蘭様にいらねー失望されたんだぞ!?」
いまだに吠えるように怒鳴るザクロを見ながら、原因が分かってしまえば、意外とくだらない事でしたね、と桔梗は納得した。
もっとも、いくらくだらない事でも原因は少なからず自分にあることが分かり、ザクロの機嫌が当分直りそうに無いことを理解した。
今この状況で何を言っても、おそらく火に油を注ぐようなものだった。
「ハハン、困りましたね」
結局あの後、散々ザクロに罵声を浴びせ掛けられ、弦を解いた途端殴られかけた。
殴られそうになった時に反射的に防いだ事も、今となっては殴られて少しでもザクロの気がすめば良かったのかもしれないと、後悔先に立たずだった。
「このまま暫く顔を合わせる機会が無い事が、輪をかけて拗らせますね……」
ため息をつき歩きながら、できれば帰る頃にはザクロの怒りが治まっていれば良いと思った。
「つまんない」
「……そう?」
唐突なブルーベルの言葉に、ウサギのぬいぐるみを抱え静かに絵本を眺めていたデイジーは聞き返した。
「そうよ、だって桔梗もトリカブトもいないし、ザクロなんかずーっと寝てるし」
「仕方ないよ……」
24時間眠り続ける勢いのザクロは確かに異常だが。
少し前までやけに眠そうだった事を思い出し、デイジーは何となくブルーベルに弁解した。
「暇ならブルーベル達の相手しても罰は当たらないわよ」
「……そっとしておこうよ」
「ニュニュ~、もうすぐお昼ご飯だから起こすのは?」
「寝てるのを起こすのはダメだってば」
「ニュー! つまんない!!」
「ばーろぉ……よく寝たぜ」
欠伸をしながら起き上がり時計を確認し、寝ていた時間を軽く計算して、呆れた。
「白蘭様の言ってた言葉も、あながち外れじゃねーってことか?」
普通に考えれば寝すぎだと思われる時間睡眠をとり、体がダルくなるどころか今までにないほどに爽快だった。
慢性過ぎて気付かなかった不調に、今更になって分かり、気まずげに髪を掻き揚げた。
「これじゃ、危険が伴う、つわれても仕方ねーか……」
ガリガリと頭を掻き、暫くの間黙り込んだ。
ふつふつと湧き上がってくるのは桔梗への怒り。
情事の時、断るのが面倒だと思い、何気なく朝まで続けられようと許してきた。
それが原因で寝不足になり、何よりも大切な白蘭からの命令を聞けなくなり、本末転倒もいい所だと苛立った。
「……つーか、桔梗の野郎いつまで帰ってこねーんだ?」
「ハハンッ、次から次へとよく湧くものですね」
潰しても潰しても湧き出て来る反抗勢力に嫌気が差しそうだった。
敵がそれなりに強ければまだ長引いても納得がいく。
けれど、手にかければあっさりと倒される数ばかりが多い相手に手間取るのは納得がいかない。
いい加減に劣勢であると言う事に気付いても良いと思うが、考えが足りない者が多いのか一向に抵抗を止めない。
「圧倒的な力も、頭が足りない相手には通用しないものですね」
期限は三週間以内。
もっとも、始めは二人で期限が十日以内だった任務だと言う事を考えれば三週間でも短いぐらいなのだろう。
余裕を想定して決められた期限ではあるが、探せば湧き出る敵に徐々に期日は迫ってくる。
逃げる相手すら確実に潰していくのは骨が折れる。
直接相手をするのは取るに足りないが、探すのは手間が掛かる。
「私は早めに終わらせたいのですが?」
誰に言うともなく問いかける言葉は目の前の集団には関係の無い言葉だった。
少数の者達が逃げ始めるのを見つけ、手が回りきらない事に気付き舌打ちをしたくなった。
一瞬視界の端に映ったのは豪快な嵐属性の炎。
手が回りきらないかと思った敵を消していく炎に、思わず振り返った。
「よそ見すんなバーロー」
不機嫌そうな声の人物に、桔梗は此処が戦場だという事を忘れそうになった。
ただ、忘れそうだと言うのは主観であり、実際は確実に目の前の敵を倒していた。
最後の一人まで倒す最中も、なぜいるのかと言う疑問は晴れなかった。
「ザクロ、なぜ此処に?」
「何だバーロォ。白蘭様の許可なら取ってるぜ?」
「ハハン、もうすぐ終わる任務でしたよ?」
「手間取ってるテメーが悪いんだろ」
不機嫌そうにぶっきらぼうに言うザクロ。
その様子は出掛ける前の怒り様は何処へ行ったのかと言いたくなるほどだった。
「私に早く会いたかったと言うことですか?」
「勘違いすんなバーロォ! 寝てんのも暇過ぎるんだよ。後、弱い相手にいつまで掛かってんのか疑問に思っただけだ」
「ハハンッ、ザクロ、それでは私を心配していたと言うのと同じですよ?」
「――ッ……!?」
今頃になって自分の行動が相手にどう映るか理解したザクロは気まずげに外方を向いた。
その様子に苦笑しながら桔梗は問いかけた。
「ザクロ、白蘭様からの許可を得たと言う事は、寝不足は解消されたのですか?」
「元凶のお前が言うなバーロー」
「その点については謝りますよ。少々貴方の体力を過信しすぎていたようですから」
「……引っかかる言い方だな」
「ハハン、次からは貴方の体力を考慮しますよ?」
「俺の体力が少ねーような言い方すんなバーロォ!!」
問題発生
微妙に納得のいかない解決案
end
(2010/12/11)
「ハハンッ、唐突に何ですかザクロ? あと、危険なので嵐の炎を所構わず出さないでください」
ザクロの炎を防ぎながら問いかける桔梗は、部屋に入る早々に怒鳴られ、理由がわからず眉を寄せた。
「テメーなんかと一生寝床共にしねぇ!!」
「ザクロ……寝言は寝てから言ってください」
弦でザクロの体を拘束した桔梗は、床に転がしたザクロへと近づいた。
「何があったのですか?」
「うるせぇ!」
ザクロは桔梗を睨みながら怒鳴り付けた。
何を理由に怒っているのかと首を傾げながら、桔梗はザクロに問いかけた。
「取り敢えず、もう暴れませんか?」
「ああ? さっさと解け。この手でテメーに制裁を与えてやる」
「ハハン……では、もう暫くこのままですね」
「解け!」
噛み付かんばかりに抗議するザクロをよそに、理不尽ですね、と桔梗はため息をついた。
仮にも恋人に、原因もわからず喧嘩を吹っかけられれば、誰でも少なからず悲しい。
特に、連日愛を確かめ合っている中では。
「お前のせいで白蘭様に任務外されたんだぞ!!」
ザクロが叫んだ言葉に考え事を止めた桔梗は、何となく理由がわかった。
「ハハンッ、寝不足が原因で外された件ですか?」
「そうだバーロォ!」
「そんなに私と任務に行きたかったのですか?」
「誰がだ!! 俺は白蘭様にいらねー失望されたんだぞ!?」
いまだに吠えるように怒鳴るザクロを見ながら、原因が分かってしまえば、意外とくだらない事でしたね、と桔梗は納得した。
もっとも、いくらくだらない事でも原因は少なからず自分にあることが分かり、ザクロの機嫌が当分直りそうに無いことを理解した。
今この状況で何を言っても、おそらく火に油を注ぐようなものだった。
「ハハン、困りましたね」
結局あの後、散々ザクロに罵声を浴びせ掛けられ、弦を解いた途端殴られかけた。
殴られそうになった時に反射的に防いだ事も、今となっては殴られて少しでもザクロの気がすめば良かったのかもしれないと、後悔先に立たずだった。
「このまま暫く顔を合わせる機会が無い事が、輪をかけて拗らせますね……」
ため息をつき歩きながら、できれば帰る頃にはザクロの怒りが治まっていれば良いと思った。
「つまんない」
「……そう?」
唐突なブルーベルの言葉に、ウサギのぬいぐるみを抱え静かに絵本を眺めていたデイジーは聞き返した。
「そうよ、だって桔梗もトリカブトもいないし、ザクロなんかずーっと寝てるし」
「仕方ないよ……」
24時間眠り続ける勢いのザクロは確かに異常だが。
少し前までやけに眠そうだった事を思い出し、デイジーは何となくブルーベルに弁解した。
「暇ならブルーベル達の相手しても罰は当たらないわよ」
「……そっとしておこうよ」
「ニュニュ~、もうすぐお昼ご飯だから起こすのは?」
「寝てるのを起こすのはダメだってば」
「ニュー! つまんない!!」
「ばーろぉ……よく寝たぜ」
欠伸をしながら起き上がり時計を確認し、寝ていた時間を軽く計算して、呆れた。
「白蘭様の言ってた言葉も、あながち外れじゃねーってことか?」
普通に考えれば寝すぎだと思われる時間睡眠をとり、体がダルくなるどころか今までにないほどに爽快だった。
慢性過ぎて気付かなかった不調に、今更になって分かり、気まずげに髪を掻き揚げた。
「これじゃ、危険が伴う、つわれても仕方ねーか……」
ガリガリと頭を掻き、暫くの間黙り込んだ。
ふつふつと湧き上がってくるのは桔梗への怒り。
情事の時、断るのが面倒だと思い、何気なく朝まで続けられようと許してきた。
それが原因で寝不足になり、何よりも大切な白蘭からの命令を聞けなくなり、本末転倒もいい所だと苛立った。
「……つーか、桔梗の野郎いつまで帰ってこねーんだ?」
「ハハンッ、次から次へとよく湧くものですね」
潰しても潰しても湧き出て来る反抗勢力に嫌気が差しそうだった。
敵がそれなりに強ければまだ長引いても納得がいく。
けれど、手にかければあっさりと倒される数ばかりが多い相手に手間取るのは納得がいかない。
いい加減に劣勢であると言う事に気付いても良いと思うが、考えが足りない者が多いのか一向に抵抗を止めない。
「圧倒的な力も、頭が足りない相手には通用しないものですね」
期限は三週間以内。
もっとも、始めは二人で期限が十日以内だった任務だと言う事を考えれば三週間でも短いぐらいなのだろう。
余裕を想定して決められた期限ではあるが、探せば湧き出る敵に徐々に期日は迫ってくる。
逃げる相手すら確実に潰していくのは骨が折れる。
直接相手をするのは取るに足りないが、探すのは手間が掛かる。
「私は早めに終わらせたいのですが?」
誰に言うともなく問いかける言葉は目の前の集団には関係の無い言葉だった。
少数の者達が逃げ始めるのを見つけ、手が回りきらない事に気付き舌打ちをしたくなった。
一瞬視界の端に映ったのは豪快な嵐属性の炎。
手が回りきらないかと思った敵を消していく炎に、思わず振り返った。
「よそ見すんなバーロー」
不機嫌そうな声の人物に、桔梗は此処が戦場だという事を忘れそうになった。
ただ、忘れそうだと言うのは主観であり、実際は確実に目の前の敵を倒していた。
最後の一人まで倒す最中も、なぜいるのかと言う疑問は晴れなかった。
「ザクロ、なぜ此処に?」
「何だバーロォ。白蘭様の許可なら取ってるぜ?」
「ハハン、もうすぐ終わる任務でしたよ?」
「手間取ってるテメーが悪いんだろ」
不機嫌そうにぶっきらぼうに言うザクロ。
その様子は出掛ける前の怒り様は何処へ行ったのかと言いたくなるほどだった。
「私に早く会いたかったと言うことですか?」
「勘違いすんなバーロォ! 寝てんのも暇過ぎるんだよ。後、弱い相手にいつまで掛かってんのか疑問に思っただけだ」
「ハハンッ、ザクロ、それでは私を心配していたと言うのと同じですよ?」
「――ッ……!?」
今頃になって自分の行動が相手にどう映るか理解したザクロは気まずげに外方を向いた。
その様子に苦笑しながら桔梗は問いかけた。
「ザクロ、白蘭様からの許可を得たと言う事は、寝不足は解消されたのですか?」
「元凶のお前が言うなバーロー」
「その点については謝りますよ。少々貴方の体力を過信しすぎていたようですから」
「……引っかかる言い方だな」
「ハハン、次からは貴方の体力を考慮しますよ?」
「俺の体力が少ねーような言い方すんなバーロォ!!」
問題発生
微妙に納得のいかない解決案
end
(2010/12/11)