桔ザク 2

「最近、ザクロってトリカブトの近くにいるよね……」

ポツリとデイジーが言った一言は、静かな室内によく響いた。

「ニュ? 言われてみればそうよね?」
「それから、やっぱりトリカブトが良いなって言ってた」
「ふ~ん、じゃあ、桔梗ってザクロとケンカしたのかしら!」
「ブ、ブルーベル、声が大きいよ、もう少し小さくしないと……」
「ハハンッ、小さくしても十分に聞こえていますが?」
「ぼばっ!?」

本を読んでいた桔梗は、ゆっくりと本を閉じ、デイジーとブルーベルを見た。

「言っておきますが、喧嘩をしたわけではありませんよ」
「だったら、あきられちゃったんでしょ?」

突き刺さるような言葉を無邪気に投げかけるブルーベル。
その言葉に対し、僅かな反応も示さなかった桔梗は、嫣然と微笑み返した。

「ハハンッ、そんな事がある訳がありませんよ」
「でも…ザクロの行動は?」
「トリカブトといることは確かですが、あれは……」

そっと訊くデイジーに答えようとした桔梗は、ふと口を噤み、入り口にいる人物に視線を向けた。

「…………迷惑なる者よ」

ザクロを抱え、歩いてきたトリカブトはポツリと言い、通り過ぎた。
桔梗はその様子を平然と見送り、口を開いた。

「おやおや、ご苦労さまですねトリカブト」
「き、桔梗……良いの?」
「何がですか?」
「そうよ! どう見たって浮気現場なのに!?」

真剣に訊くデイジーとブルーベルに、笑いが堪えきれず肩を震わせた。

「二人とも、何か勘違いをしていませんか?」
「ニュ? 何が?」
「だって……」
「確かに、ザクロはトリカブトのもとへと行きますよ。ただし、ブルーベルやデイジーが考えているような色事ではなく……」

そこで笑い声を零してから、可笑しそうに桔梗は続けた。

「昼寝をするための枕を求めて、ですが」

予想外の答えにポカンとした表情を浮かべるデイジーとブルーベル。
そんな二人を軽く受け流し、桔梗は閉じていた本を広げた。



理想の……
枕を求めて

「…………睡眠の時、幻術の時、迷惑な時」


end
(2010/11/16)
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