桔ザク 2

「珍しいですね」
「……悪いってのか?」
「ハハンッ、いいえ、とても嬉しいですよ。貴方が積極的なのは」

言葉を区切ってから、桔梗は不機嫌そうに軽く睨むザクロへと微笑みかけた。

積極的、と言っても誘うわけではない。
ただ、こちらの行為に対し受け入れるだけ。
それが、どれほど自尊心を押さえ込んでの行動か、知らない訳ではない。

「もっとも、声を耐えようとするのはあまり歓迎できませんが」
「はッ…ぁ……バー、ロォ、どうでもいいだろ」

荒く息をつきながら反論するザクロ。
その言葉に、貴方らしいですよ、と桔梗は言い、無意識に逃げようとする相手を捕らえ引き寄せた。
息を殺して耐える相手の様子を眺め、軽く憂い気に呟いた。

「これではまるで、強姦でもしている気分ですね」
「あぁ? 何がだ、バ…ッ…!」
「ハハン、積極的なのはとても嬉しいですよ。ですが、こうも声は出さない、その手は縋り付こうとすらしないでは……少々此方が無理矢理しているように感じまして」

スラスラと言葉を紡ぎながら、桔梗は自分の手の内で乱れるザクロを眺めた。
言葉にした通り、頼ろうともせずきつく無機質を掴んだ手を、可能なかぎり声を押し殺す様を。

本当に、強姦でもしている気分ですね、と独り言のように頭の中で反復し。
あまりその声を発しないザクロへと口づけた。

「いっそ、薬でも使いましょうか? その頑ななまでの自尊心を崩す理由を作れば、少しは素直になっていただけますか?」

本気ではなく、これはただの意地悪だと自覚しながら囁けば。
熱に浮されながらも、強い光を持った瞳で睨まれた。

「ハハンッ、冗談ですよ」



理由は知っている
それでも、時折意地悪をしたくなるからたちが悪い


end
(2010/09/30)
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