桔ザク 2
目を開けると、見知らぬ白い天井が広がっていた。
それが現実であると理解し、桔梗はゆっくりと起き上がった。
「ハハン、生きているようですね……」
起き上がり、呟かれた言葉はどこか希薄だった。
頭を貫かれた感覚さえ明確に思い出せるのに、治療済みの体は傷一つ無かった。
生きていた、何のために生かしたのか、そんな疑問が頭を巡るが、どうでもいい事だと思えてきた。
「あら、おめざめ?」
かけられた声に桔梗が視線を動かすと、ヴァリアーの晴の守護者であるルッスーリアがいた。
「目が覚めなかったらどうしようかと思っちゃったわ~。何せ命はつなぐなんて約束しちゃった手前、死なせたら名誉に係わるもの」
「そうですか」
「ああ、そう言えば、貴方にとっても良いお話があるんだけど」
桔梗の様子をさほど気にかけないまま、ルッスーリアは桔梗にリングを渡した。
ボンゴレリングとよく似たデザインに、中央にVARIAと書かれたリング。
渡されたリングを眺めてから、桔梗は疑問を持った目でルッスーリアを見た。
「少し急がせて作らせたけど、正式な雲属性のヴァリアーリングよ。貴方に、ヴァリアーの雲の守護者に就いてもらうようボンゴレの十代目に言われてるの。こっちとしては、いつまでも欠けていた席が埋まるし、別に支障はないから受けたんだけど」
そこでルッスーリアは言葉を区切り、何の反応も示さない桔梗を眺めた。
疑問を持った目は、いつの間にか外されていた。
「ねぇ、何か言ったら? 折角、就職先が決まったのよ?」
「ハハン、今更別のマフィアに入るのに、何の意味があると言うのですか」
「あら、張り合いが無いわね。そんなに覇気のない声で言われるなんて。忠誠心もそこまでいくと感心しちゃうわ」
ボスであった白蘭を失ったせいか、生きる意味そのものを失ったように見える桔梗。
その様子を眺めていたルッスーリアは、何か別の部分も絡んでいるように感じた。
「貴方、そんなに仲間を失ったのがショックだったの?」
仲間と言う言葉に、ほんの少し、普通ならば気がつかない程度の僅かな反応を示した桔梗。
その反応に、ルッスーリアは少し黙ってから、不思議そうに呟いた。
「そんな風に見えないのに、少しはリーダーとして仲間に愛着でもあったのかしら?」
桔梗の事をさして知りはしないルッスーリアだったが、仲間を失った、と言う理由だけが原因ではないように感じ。
心の中で自分の言葉を打ち消した。
「ま、何にせよ、貴方にはヴァリアーの雲の守護者をやってもらうと思うわ。だから自殺なんて考えちゃだめよ?」
「私に選択肢は端から無いと言いたいのですか」
「そんなところね…………そう言えば知ってる? ボンゴレでは、雲は時に他の天候の契機になるって言われてるの。雲は嵐を巻き起こし、嵐が来れば雨が降って、その後は晴れるものよ?」
それは、どういう意味だと桔梗が訊く前に、ルッスーリアは茶目っ気たっぷりに笑った。
「少しぐらいは、人生って希望もないとやっていけないのよね。貴方も、そう悲観しなくても良いと思うわよ?」
ルッスーリアの言葉に、桔梗が問い返そうとすると、ルッスーリアは自分の口に人差し指を当て、耳を澄ますよう促した。
始めのうちは眉を寄せ、何の事かと言いたげに黙っていた桔梗は、しだいに鮮明に聞き取れる様になる足音に気づいた。
開け放たれた扉
そこにいる人物に、知らずに息を呑んだ。
end
(2010/08/17)
それが現実であると理解し、桔梗はゆっくりと起き上がった。
「ハハン、生きているようですね……」
起き上がり、呟かれた言葉はどこか希薄だった。
頭を貫かれた感覚さえ明確に思い出せるのに、治療済みの体は傷一つ無かった。
生きていた、何のために生かしたのか、そんな疑問が頭を巡るが、どうでもいい事だと思えてきた。
「あら、おめざめ?」
かけられた声に桔梗が視線を動かすと、ヴァリアーの晴の守護者であるルッスーリアがいた。
「目が覚めなかったらどうしようかと思っちゃったわ~。何せ命はつなぐなんて約束しちゃった手前、死なせたら名誉に係わるもの」
「そうですか」
「ああ、そう言えば、貴方にとっても良いお話があるんだけど」
桔梗の様子をさほど気にかけないまま、ルッスーリアは桔梗にリングを渡した。
ボンゴレリングとよく似たデザインに、中央にVARIAと書かれたリング。
渡されたリングを眺めてから、桔梗は疑問を持った目でルッスーリアを見た。
「少し急がせて作らせたけど、正式な雲属性のヴァリアーリングよ。貴方に、ヴァリアーの雲の守護者に就いてもらうようボンゴレの十代目に言われてるの。こっちとしては、いつまでも欠けていた席が埋まるし、別に支障はないから受けたんだけど」
そこでルッスーリアは言葉を区切り、何の反応も示さない桔梗を眺めた。
疑問を持った目は、いつの間にか外されていた。
「ねぇ、何か言ったら? 折角、就職先が決まったのよ?」
「ハハン、今更別のマフィアに入るのに、何の意味があると言うのですか」
「あら、張り合いが無いわね。そんなに覇気のない声で言われるなんて。忠誠心もそこまでいくと感心しちゃうわ」
ボスであった白蘭を失ったせいか、生きる意味そのものを失ったように見える桔梗。
その様子を眺めていたルッスーリアは、何か別の部分も絡んでいるように感じた。
「貴方、そんなに仲間を失ったのがショックだったの?」
仲間と言う言葉に、ほんの少し、普通ならば気がつかない程度の僅かな反応を示した桔梗。
その反応に、ルッスーリアは少し黙ってから、不思議そうに呟いた。
「そんな風に見えないのに、少しはリーダーとして仲間に愛着でもあったのかしら?」
桔梗の事をさして知りはしないルッスーリアだったが、仲間を失った、と言う理由だけが原因ではないように感じ。
心の中で自分の言葉を打ち消した。
「ま、何にせよ、貴方にはヴァリアーの雲の守護者をやってもらうと思うわ。だから自殺なんて考えちゃだめよ?」
「私に選択肢は端から無いと言いたいのですか」
「そんなところね…………そう言えば知ってる? ボンゴレでは、雲は時に他の天候の契機になるって言われてるの。雲は嵐を巻き起こし、嵐が来れば雨が降って、その後は晴れるものよ?」
それは、どういう意味だと桔梗が訊く前に、ルッスーリアは茶目っ気たっぷりに笑った。
「少しぐらいは、人生って希望もないとやっていけないのよね。貴方も、そう悲観しなくても良いと思うわよ?」
ルッスーリアの言葉に、桔梗が問い返そうとすると、ルッスーリアは自分の口に人差し指を当て、耳を澄ますよう促した。
始めのうちは眉を寄せ、何の事かと言いたげに黙っていた桔梗は、しだいに鮮明に聞き取れる様になる足音に気づいた。
開け放たれた扉
そこにいる人物に、知らずに息を呑んだ。
end
(2010/08/17)