REBORN!

よく言えば人懐こく、悪く言えば生意気としか言いようがない。
それは十年後も今も変わらなかった。
さしあたって、研究を邪魔をするところは十年後と全く変わらず。
むしろ、邪魔をする手口が幼稚な分、強引な気すらした。

「いつになったらミーの事を見てくれますか」
「生憎と私には君にかまっている暇はない」
「前から思ってたんですけど、紙に計算式を書いてるだけなのに楽しいですか?」
「楽しいとも。ただ、君が私に抱き着いていなければもっと効率よくできるものをと少々苛立ってもいるがな」

視界の端に見える赤い色を睨みながら答えると、相手はさして気にせず返答してきた。

「人の目に良い色は緑なので、ミーはヴェル公で癒しを得ているんです」
「そうか。では、私が苛立ってくる理由は君のその被り物のせいだろうな」

前の蛙の方が幾分よかった、と今は小さい相手に呟いた。

「……ヴェル公。ミーは林檎の被り物以外したことがありませんよ」
「ん? ああ、そう言えば記憶は受け取ったが失くしていたな」

チーズの角で頭を打って忘れたと聞いた時には、呆れて物も言えなかった。


「知らないのならば先ほどの言葉は忘れてくれたまえ」
「不愉快です」


今までより強く抱きしめてきた相手に、非難するよう睨んだ。

「君は私を潰すつもりか? 体格差を考えてくれ」
「ミーの知らない人物の事を考えるヴェル公が不愉快です」
「…………」

その知らない人物はお前だと言いたくなった口をつぐみ、沈黙で返した。
記憶を忘れているくせに、とたまに思うのはおそらく相手が忘れているからこそ苛立つからだ。

「ミーはヴェル公の事を好きです。だからミー以外を考えるヴェル公は嫌いです」

拗ねたように小さく呟いたフランは、さっさと部屋を出て行った。
耳元で言われた言葉に、驚くほどの間の後ようやく頭が動き始めた。


「……支離滅裂な子供の戯言だ」



言葉の羅列
前と変わらず、それだけだ。


end
(2012/01/06)
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