断片話

◆光学迷彩
(黒曜)

「今日は緑色の妖精がいます」
「ちょっと、フランがまた変な事言ってるわよ」
「緑?」
「緑らんてそこにいる奴しかいないびょん」

一斉に睡眠をとっているヴェルデへと視線を向けるが、フランは見当違いの方向を見ながら踊りを踊っていた。

「オンブラコッコ、ドンブラコッコ。妖精よ立ち去りたまえ~」

「クフフ、何を騒いでいるのですか、お前たち?」
「骸ちゃん! フランが変なのよ」
「何もないとこ見て変な踊り踊った後は、部屋中走り回ってるびょん!」
「ほぉ、それはそれは」
「骸師匠ー、助けてください。緑の妖精がヴェル公を狙ってるんです」

バタバタとヴェルデを抱えながら走り回るフランは少し慌てた様子で助けを求めた。

「もー、さっきからずっとあの調子なのよ?」

「大方、私が裏切り逃亡した、とでも思ったのだろう」

馬鹿な奴らだ、と憐れむように床に倒れている人物達をヴェルデは眺めた。

「こうなると分かっていたなら、帰った方がよかったのでは? ヴェルデ博士」
「私を引き留めた君が言うか」
「クフフ、そうでしたね。しかし何故フランとヴェルデ博士にだけ見えたのかが不思議ですね」
「生憎と、私は裏切りが大嫌いでね」
「さすがヴェルデ博士、用心深いですね」

その用心深さによって暗殺を免れたのだから、さすがとも言えるが。

「非力な博士にとって、見えたとしても対応しようがないのでは?」


(2012/04/17)
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