はた細
来る日も来る日も訓練に明け暮れる。
そんな日々を送っていれば、稀にペース配分を間違う日だって訪れる。
体に残る疲労感に、仮眠でも取れば消えるかと思ったのも間違いだった。
「なぁ、オイ。起きろよ」
「……何?」
少し強めに肩を揺すられる不快感に閉じていた目を開ければ。
ベッドサイドにアイツがいた。
「そろそろ大浴場使える時間終わるけど……いいのかよ?」
「――あっそ、別にいいよ今日は」
起き上がり眼鏡をかけ直して時間を確認すれば、消灯時間が近かった。
ほぼ自由時間を潰して寝ていた事に舌打ちをしたいほどだった。
もういっそ、このまま寝た方が疲労回復的には良いかと考えていれば。
またアイツから声をかけてきた。
「疲れてるのか?」
「見れば分かるだろ。疲れてるよ」
「えっと……じゃ…じゃあ、お、おっぱい揉むか!?」
「はぁ?」
突然何を言い出すのか。
コイツは馬鹿なのか?っといった視線を向けた自分は悪くない。
男だけの雑談をたまたま聞いて間違って解釈したのか。
それとも、また他の奴に冗談を吹きこまれたのか。
そう言われて男が嬉しがるのは、多分もっと大きく柔らかい胸の事だ。
「だ…だから、疲れてるなら。お、おっぱい揉む…うぎゃぁお!?」
そして何故こう言う時だけひるまずに、もう一度言うのか。
二回も訳の分からない事を言ってきた相手に手を伸ばし。
無造作に胸を揉めば、飛び上がるような声を出して相手が距離をとった。
「なっ、何すんだよ?!」
「お前が揉めって言ったんだろ」
「え? ……あれ? そう…だけどさ……」
顔を真っ赤にしての抗議すら、正論を返せばすぐに納得する。
やっぱりコイツ馬鹿だろと呆れるしかなかった。
これに懲りたら、不用意に考えなしの事を言うなと――
「……疲れ、取れたか?」
「あの程度で疲れが取れる訳ないだろ」
「はぁ!? じゃあ、も、もっと揉むか?」
ああ、コイツはこれぐらいの痛い目にあっても、まだ分からないのか。
だからお前は、他の男達から余計な事を吹きこまれて影で笑われるんだと、妙にイラついた。
「――正面からだと揉みにくい。布越しだと分かりづらい。ボクが座ってるのにそっちが立ったままの状態はどうなんだ」
「待って! 待てよ!! 一気に言うなよぉ」
少し問題点を挙げただけでキャパオーバーで涙目。
そう言う所が他の奴を煽るのだろう。
「取り敢えず、此処に座れ」
指示を出してやれば、素直にアイツは行動してきた。
手酷く痛い目にあわないと分からないなら、教えてやるまでだと思った。
「なあ、まだ疲れ取れないのか…?」
「少し黙っててくれるかな」
「うぐっ……」
本当にコイツは馬鹿だ。
黙ってろと言われて、普通自発的に自分で自分の口を塞ぐやつがいるか。
上着を捲られ、後ろから抱き込まれる形で胸を揉まれて、何か疑問に思え。
くすぐったさからなのかは知らないが、ビクつくな、涙目になるな。
無防備に胸を揉ませるとか、まさか他の奴にまでやらせてないだろうな。
そうつらつらと考えながら、いったいどれぐらいの時間が経ったのか。
ふと、何故自分はいつまでもコイツの胸を揉み続けているのかと思った。
「お、終わった…のか?」
「…………」
「疲れは取れた――きゃん!?」
涙目のまま振り向いてきた相手の顔に、強めのデコピンを打ち込み。
本当に、コイツは馬鹿だと思った。
「胸が大きくなってから出直して来い」
「う…く……ぐぅ………オマエ、人の親切を何だと思って……」
「あと、他の奴には絶対におっぱいを揉むかとか訊くな」
「はぁ? ……何で?」
「いいから絶対に訊くな。分かったらさっさと退いてくれるかな? そろそろ消灯の時間だろ」
「……お、おう?」
捲し立てるように言葉を紡いでから視線を外し就寝の準備を始めれば。
疑問符だらけの様子だった相手は素直に退いて、上段のベッドへと向かい始めた。
相手が完全に上の方に行ったのを感じ取ってから、先ほどまでの自分の行動を振り返った。
「何にイラついたんだボクは……」
ぼんやりと先ほどまでアイツに触れていた手を眺め。
小さく、上の方にいる相手には聞こえない程の声で呟き。
下らない思考をし始めようとする頭を止めるように目を閉じた。
end
(2018/09/15)
そんな日々を送っていれば、稀にペース配分を間違う日だって訪れる。
体に残る疲労感に、仮眠でも取れば消えるかと思ったのも間違いだった。
「なぁ、オイ。起きろよ」
「……何?」
少し強めに肩を揺すられる不快感に閉じていた目を開ければ。
ベッドサイドにアイツがいた。
「そろそろ大浴場使える時間終わるけど……いいのかよ?」
「――あっそ、別にいいよ今日は」
起き上がり眼鏡をかけ直して時間を確認すれば、消灯時間が近かった。
ほぼ自由時間を潰して寝ていた事に舌打ちをしたいほどだった。
もういっそ、このまま寝た方が疲労回復的には良いかと考えていれば。
またアイツから声をかけてきた。
「疲れてるのか?」
「見れば分かるだろ。疲れてるよ」
「えっと……じゃ…じゃあ、お、おっぱい揉むか!?」
「はぁ?」
突然何を言い出すのか。
コイツは馬鹿なのか?っといった視線を向けた自分は悪くない。
男だけの雑談をたまたま聞いて間違って解釈したのか。
それとも、また他の奴に冗談を吹きこまれたのか。
そう言われて男が嬉しがるのは、多分もっと大きく柔らかい胸の事だ。
「だ…だから、疲れてるなら。お、おっぱい揉む…うぎゃぁお!?」
そして何故こう言う時だけひるまずに、もう一度言うのか。
二回も訳の分からない事を言ってきた相手に手を伸ばし。
無造作に胸を揉めば、飛び上がるような声を出して相手が距離をとった。
「なっ、何すんだよ?!」
「お前が揉めって言ったんだろ」
「え? ……あれ? そう…だけどさ……」
顔を真っ赤にしての抗議すら、正論を返せばすぐに納得する。
やっぱりコイツ馬鹿だろと呆れるしかなかった。
これに懲りたら、不用意に考えなしの事を言うなと――
「……疲れ、取れたか?」
「あの程度で疲れが取れる訳ないだろ」
「はぁ!? じゃあ、も、もっと揉むか?」
ああ、コイツはこれぐらいの痛い目にあっても、まだ分からないのか。
だからお前は、他の男達から余計な事を吹きこまれて影で笑われるんだと、妙にイラついた。
「――正面からだと揉みにくい。布越しだと分かりづらい。ボクが座ってるのにそっちが立ったままの状態はどうなんだ」
「待って! 待てよ!! 一気に言うなよぉ」
少し問題点を挙げただけでキャパオーバーで涙目。
そう言う所が他の奴を煽るのだろう。
「取り敢えず、此処に座れ」
指示を出してやれば、素直にアイツは行動してきた。
手酷く痛い目にあわないと分からないなら、教えてやるまでだと思った。
「なあ、まだ疲れ取れないのか…?」
「少し黙っててくれるかな」
「うぐっ……」
本当にコイツは馬鹿だ。
黙ってろと言われて、普通自発的に自分で自分の口を塞ぐやつがいるか。
上着を捲られ、後ろから抱き込まれる形で胸を揉まれて、何か疑問に思え。
くすぐったさからなのかは知らないが、ビクつくな、涙目になるな。
無防備に胸を揉ませるとか、まさか他の奴にまでやらせてないだろうな。
そうつらつらと考えながら、いったいどれぐらいの時間が経ったのか。
ふと、何故自分はいつまでもコイツの胸を揉み続けているのかと思った。
「お、終わった…のか?」
「…………」
「疲れは取れた――きゃん!?」
涙目のまま振り向いてきた相手の顔に、強めのデコピンを打ち込み。
本当に、コイツは馬鹿だと思った。
「胸が大きくなってから出直して来い」
「う…く……ぐぅ………オマエ、人の親切を何だと思って……」
「あと、他の奴には絶対におっぱいを揉むかとか訊くな」
「はぁ? ……何で?」
「いいから絶対に訊くな。分かったらさっさと退いてくれるかな? そろそろ消灯の時間だろ」
「……お、おう?」
捲し立てるように言葉を紡いでから視線を外し就寝の準備を始めれば。
疑問符だらけの様子だった相手は素直に退いて、上段のベッドへと向かい始めた。
相手が完全に上の方に行ったのを感じ取ってから、先ほどまでの自分の行動を振り返った。
「何にイラついたんだボクは……」
ぼんやりと先ほどまでアイツに触れていた手を眺め。
小さく、上の方にいる相手には聞こえない程の声で呟き。
下らない思考をし始めようとする頭を止めるように目を閉じた。
end
(2018/09/15)
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