断片話

◆共同交渉中
(勾狼×阿伏兎)

目が眩みそうな光が見えた。
そう、思った時には視界が急に暗くなった。

「……勾狼の旦那、恐れ多過ぎて恐縮なので、マントはお返しいたしますよ」
「いや、急に暑くなったもんでなぁ!少し持っててくれ!!」
「はぁ、分かりました」

不器用だ。

滅多に日が差さない星と言われ、傘を差していなかった自分は馬鹿としか言いようがないが。
日が出たと思った途端に、付けていたマントを被せてきた相手は不器用だと思った。
拙いほどの理由を挙げてくるのも、さらに不器用さに拍車をかけていた。

日に弱い事を知った上で庇う。
弱いものは見放すと言う常識を逸脱した相手の行動に、面映ゆく感じた。
自分の傘を差し、相手のマントを腕にかけて持てば良いというこの状況で、もう少しだけ、不器用な優しさを受け入れたいと馬鹿みたく考えてしまった。


(2011/01/09)
5/98ページ