小話

旧:拍手文-秋


「焼き芋食べたい」
「……食堂にでも行け」
また唐突にこの団長様は、と思いながら阿伏兎は冷静に言った。
その言葉を無視して、神威は質問した。
「ねー阿伏兎、どっかに落ち葉ないかな?」
「春雨戦艦内でボヤ騒ぎを起こす気か、このすっとこどっこい」
ガリガリと苛立ちながらペンを走らせる阿伏兎は、馬鹿も休み休み言え、と言い放った。
「書類で焼けるかなー」
ギョッとして神威を振り向くと、その目は山積みの書類を見ていた。
「焼いても良い、阿伏兎?」
「今すぐ焼き芋を作ってきます……」

焼き芋
落ち葉か石焼きどっちにしますか?


end


「阿伏兎、紅葉狩りに行こうよ」
番傘を片手に、顔にまいた包帯をなびかせ歩いていた神威が、唐突に振り返ってきた。
「はぁ?」
「も、み、じ、狩、り」
「花より団子のあんたが、か? それとも、まさか本当に紅葉でも狩るつもりか?」
名称で勘違いするにしても、もう少し考えてから言え、と続ける阿伏兎。
その言い様に、大げさにため息をついて神威は阿伏兎へと近づいた。
「俺だって何かを見て綺麗だなって思うことぐらいあるよ?」
「常日頃、食う、戦うしかないような人物の口から、いきなり紅葉狩りという単語が出るとは普通思わんだろ」
「思い立ったが吉日ってよく言うだろ?そこら辺にある派手に散ってる血を見てたら急に思いついたんだ」
「戦場で思いついても吉日と言うんですかねぇ……」

紅葉狩り
真っ赤できれいな事でしょう?


end
(2010/10/02)
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