かむあぶ
「織姫と彦星って年に一回しか会えないんだっけ?」
「まあ、そう言われてますねぇ」
「あれって自業自得だよね?」
素麺をすすりながら、飾った竹ごしに宙を眺め神威は言い切った。
その言葉に、確かにそうだが、もう少しオブラートに包んで言えと、追加分の素麺を持って来た阿伏兎は口に出さずに思った。
「職務怠慢で引き離されて、鳥の力でしか会えなくせに悲劇って、都合よすぎない?」
「本人達にしてみれば悲劇なんでしょうよ、団長は共感できない事でしょうが」
「年に一回で気が済むなんて随分と冷めてるよね」
「いえいえ、案外年に一回だからこそ熱愛が続いているのかもしれませんぜ?」
「ふ~ん、俺は毎日阿伏兎に会ってても冷めないけど?」
堂々と言う神威に、架空の人物達と張り合うなと追加分の素麺をたらいに移してから、相手の頭を軽く叩いた。
「あんたなら、年に一回しか会うなと上から命令されても早々に破りそうですね」
呆れ半分に呟かれた言葉を聞いた神威は、阿伏兎に対し笑みを向けた。
「阿伏兎って時々つまらない事を言うね? 悲しみに明け暮れて褥を涙で濡らす事や、他力本願で諦めるなんて、俺がするわけないだろ?」
「さようですか、まあ、団長らしいと言えばらしいですが」
神威の近くに座り、同じように素麺に手を伸ばす阿伏兎は、軽く受け流しながら返答した。
「そう言えば、短冊飾ってなかったね?」
飾られた竹に足りない物を指摘した神威は、願い事を何にしようかと阿伏兎へと訊いた。
「……叶える側がイチャつくのに忙しくて、どうせ読まれないと思いますが?」
「アハハ! それもそうだね」
五色の短冊
願いは白紙のまま飾った。
end
(2010/07/07)
「まあ、そう言われてますねぇ」
「あれって自業自得だよね?」
素麺をすすりながら、飾った竹ごしに宙を眺め神威は言い切った。
その言葉に、確かにそうだが、もう少しオブラートに包んで言えと、追加分の素麺を持って来た阿伏兎は口に出さずに思った。
「職務怠慢で引き離されて、鳥の力でしか会えなくせに悲劇って、都合よすぎない?」
「本人達にしてみれば悲劇なんでしょうよ、団長は共感できない事でしょうが」
「年に一回で気が済むなんて随分と冷めてるよね」
「いえいえ、案外年に一回だからこそ熱愛が続いているのかもしれませんぜ?」
「ふ~ん、俺は毎日阿伏兎に会ってても冷めないけど?」
堂々と言う神威に、架空の人物達と張り合うなと追加分の素麺をたらいに移してから、相手の頭を軽く叩いた。
「あんたなら、年に一回しか会うなと上から命令されても早々に破りそうですね」
呆れ半分に呟かれた言葉を聞いた神威は、阿伏兎に対し笑みを向けた。
「阿伏兎って時々つまらない事を言うね? 悲しみに明け暮れて褥を涙で濡らす事や、他力本願で諦めるなんて、俺がするわけないだろ?」
「さようですか、まあ、団長らしいと言えばらしいですが」
神威の近くに座り、同じように素麺に手を伸ばす阿伏兎は、軽く受け流しながら返答した。
「そう言えば、短冊飾ってなかったね?」
飾られた竹に足りない物を指摘した神威は、願い事を何にしようかと阿伏兎へと訊いた。
「……叶える側がイチャつくのに忙しくて、どうせ読まれないと思いますが?」
「アハハ! それもそうだね」
五色の短冊
願いは白紙のまま飾った。
end
(2010/07/07)