かむあぶ
「今年も出すか……」
ため息をつきながら、全宇宙お中元カタログを眺める阿伏兎は頭を悩ませていた。
見栄、そう言い切ってしまえば味気ないが、恒例行事には違いない。
去年と同じにするべきか、それとも別の品にするべきか。
いっそ、この悩む時間を書類整理に当てられれば、どんなに有効に使えるか……
そんな事を考えている場合ではないとは思うが、ついつい現実逃避をしたくなる。
「第八師団には、毎年の事ながらハムか? 第四師団には、フルーツゼリー。後は、アホ……阿呆提督には……ビール、を送ったらビール腹を促進するしなぁ……無難にフルーツにでもしておくか」
一覧表を作りながら、本来ならば団長が考えるものを、何故自分が決めているんだと愚痴りたくなった。
「阿伏兎、何してるの?」
噂をすれば何とやら、呑気に笑みを浮かべながら神威が後ろから抱き着いてきた。
「……明日にでもまわすかコンチクショー」
「あれ? もう終わりにするの?」
カタログを閉じ、端へと追いやった阿伏兎を見て、神威は意外そうに聞いた。
「あんたの相手をしなくてはいけませんからねぇ」
「よくわかってるね」
後ろを振り向きながら言えば、神威は満足げに笑って軽く口付けた。
徐々に深くなっていくソレに応えながら阿伏兎は、明日起きた時には一覧表が出来上がっていればいいと、どこか遠い目で思った。
「ほう、今年は酒か」
孔雀扇を持ちながら、第四師団団長である華陀は贈られてきた一升瓶を見ながら笑った。
「たまには気前のいいものだな、第七師団も」
有名な銘柄の酒を眺めていると、ふと付箋が貼られていることに気がついた。
「何じゃこれは?」
ペリッと付箋を剥がし、そこに書かれていた内容を読み、ワナワナと肩を震わせた。
『ふて寝用の寝酒にどうぞ。神威』
「神威ィイイイ!!」
「ほぉ! 今年は気前がいいな!!」
ほくほくとしながら、第八師団団長である勾狼は、いつもの倍はあるお中元箱を開けさせていた。
「…………ドッグフード?」
箱一杯に詰められていたのは、犬の絵が描かれたペット用のエサ。
唖然として眺めるが、毎年のように贈られるハムではなく、そこにはドッグフードしかない。
念のためにドッグフードの袋を開けさせたが、やはり中身はドッグフード。
「手違いか?」
確かに犬顔、と言うか狼顔だが、この冗談は笑えない。
ひとしきり考え、やはり手違いだろうと結論を出した勾狼だったが、ひっそりと貼られた付箋を見つけた。
『いっぱい食べて下さい。神威』
「食えるかァアアア!!」
「団長ォオオオ!! あんた何贈ったんだ!?」
既に注文済みのお中元領収書を見ながら、阿伏兎は叫んだ。
「えっ? 何って第四師団には寝酒用の酒、第八師団にはドッグフードだけど?」
挙げられた例に目眩を覚えながら、無礼千万のお中元を勝手に決めた神威を睨んだ。
「勝手な事をするな!」
「阿伏兎の負担を減らしたかっただけなのに」
口を尖らせながら言う神威に、負担軽減どころか、余計な負担を負わせているだろと頭痛がしてきた。
「ちなみに……アホ……阿呆提督には?」
恐る恐る、それこそまともな物を選んでいてくれと願いながら聞いたが、神威からの返答に聞かなければ良かったと後悔した。
「えーっと、ダイエット食品?」
恒例の品、お中元
日ごろの嫌みを籠めて!
end
(2010/06/26)
ため息をつきながら、全宇宙お中元カタログを眺める阿伏兎は頭を悩ませていた。
見栄、そう言い切ってしまえば味気ないが、恒例行事には違いない。
去年と同じにするべきか、それとも別の品にするべきか。
いっそ、この悩む時間を書類整理に当てられれば、どんなに有効に使えるか……
そんな事を考えている場合ではないとは思うが、ついつい現実逃避をしたくなる。
「第八師団には、毎年の事ながらハムか? 第四師団には、フルーツゼリー。後は、アホ……阿呆提督には……ビール、を送ったらビール腹を促進するしなぁ……無難にフルーツにでもしておくか」
一覧表を作りながら、本来ならば団長が考えるものを、何故自分が決めているんだと愚痴りたくなった。
「阿伏兎、何してるの?」
噂をすれば何とやら、呑気に笑みを浮かべながら神威が後ろから抱き着いてきた。
「……明日にでもまわすかコンチクショー」
「あれ? もう終わりにするの?」
カタログを閉じ、端へと追いやった阿伏兎を見て、神威は意外そうに聞いた。
「あんたの相手をしなくてはいけませんからねぇ」
「よくわかってるね」
後ろを振り向きながら言えば、神威は満足げに笑って軽く口付けた。
徐々に深くなっていくソレに応えながら阿伏兎は、明日起きた時には一覧表が出来上がっていればいいと、どこか遠い目で思った。
「ほう、今年は酒か」
孔雀扇を持ちながら、第四師団団長である華陀は贈られてきた一升瓶を見ながら笑った。
「たまには気前のいいものだな、第七師団も」
有名な銘柄の酒を眺めていると、ふと付箋が貼られていることに気がついた。
「何じゃこれは?」
ペリッと付箋を剥がし、そこに書かれていた内容を読み、ワナワナと肩を震わせた。
『ふて寝用の寝酒にどうぞ。神威』
「神威ィイイイ!!」
「ほぉ! 今年は気前がいいな!!」
ほくほくとしながら、第八師団団長である勾狼は、いつもの倍はあるお中元箱を開けさせていた。
「…………ドッグフード?」
箱一杯に詰められていたのは、犬の絵が描かれたペット用のエサ。
唖然として眺めるが、毎年のように贈られるハムではなく、そこにはドッグフードしかない。
念のためにドッグフードの袋を開けさせたが、やはり中身はドッグフード。
「手違いか?」
確かに犬顔、と言うか狼顔だが、この冗談は笑えない。
ひとしきり考え、やはり手違いだろうと結論を出した勾狼だったが、ひっそりと貼られた付箋を見つけた。
『いっぱい食べて下さい。神威』
「食えるかァアアア!!」
「団長ォオオオ!! あんた何贈ったんだ!?」
既に注文済みのお中元領収書を見ながら、阿伏兎は叫んだ。
「えっ? 何って第四師団には寝酒用の酒、第八師団にはドッグフードだけど?」
挙げられた例に目眩を覚えながら、無礼千万のお中元を勝手に決めた神威を睨んだ。
「勝手な事をするな!」
「阿伏兎の負担を減らしたかっただけなのに」
口を尖らせながら言う神威に、負担軽減どころか、余計な負担を負わせているだろと頭痛がしてきた。
「ちなみに……アホ……阿呆提督には?」
恐る恐る、それこそまともな物を選んでいてくれと願いながら聞いたが、神威からの返答に聞かなければ良かったと後悔した。
「えーっと、ダイエット食品?」
恒例の品、お中元
日ごろの嫌みを籠めて!
end
(2010/06/26)