かむあぶ

「何で俺がこんな星まで来なくちゃいけないの?」


太陽光がサンサンと降り注ぐ中、無理やり連れてこられた神威は阿伏兎へと質問した。



「何でって……あんたうちの団長だろ? 上のもんは上のものらしく、たまにはお偉い依頼人に会ってもらわないとこっちが困るんですよ」

神威と同じく太陽の光を避けるよう傘を差していた阿伏兎はため息をつきながら、これからの事を考え気疲れをしていた。

「だいたいさーご飯もまだなんだよ?」
「依頼人に媚びでも売れば飯ぐらい食わせてくれるでしょうよ、何しろ男色家だそうですから」
「ふ~ん、だからムッサイ宇宙海賊に咲く1輪の花のような俺を連れてきたの?」
「……そう考えられるあんたの頭をカチ割りてぇよ」
「あはは! 冗談だよ、何でもいいから早くご飯たべたいな~」

ニコニコと薄ら笑いを浮かべながらスタスタと前を歩いていく神威、
その後ろで、ああ、やっぱり連れてくるんじゃなかったと阿伏兎は思った。




「で? どういう事かな阿伏兎?」

ピリピリとした殺気を受けながら阿伏兎は上からの命令を忠実に繰り返した。


「何でも、今日会った依頼人の方が上に働きかけて、団長ともう一度会いたいんだとよ……」
「へ~……で?」

「是非にと、団長に惚れた依頼人の金を受け取った上は、心良く引き受けたそうだ……で、団長、もう一度会ってやってくれませんかねぇ、第七師団の部下達の首のためにも」
「そんな首ならいつでも上のジジイ共にやれよ」
「そうはいかないんだよ団長様……」


その後、なだめすかし神威を何とか送り出した阿伏兎は本気で明日には飛びそうな自分の首を心配したが……

「団長、何で早々に帰ってきたんだ?」



「まったく、ふざけてるよ」

返り血のついた頬を雑に袖で拭きながら、神威は呆れながらつぶやいた。


「俺じゃなくて阿伏兎だった」
「……はぁ?」
「だから、今日の昼に来た、傘を差したチャイナ服の人はどおしたって言われたから、よくよく聴いてみれば阿伏兎だった」

にっこりと笑いながら、俺も同じ様に傘差してチャイナ服着てるのにね、と殺気を振りまきながら神威は言った。


「ふざけてるから半殺しにしたけど、別に良いよね? それとも、俺以外に掘られたかった?」
「……謹んでお断りしますよ」



夜目、遠目、傘の内って言うけどね
わき目も振らず阿伏兎に目をつけるって、殺されたいの?


end
(2010/01/27)
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