かむあぶ

後始末をするのはいつもの事。
今回は少しだけ事が大事で、始末書提出だけではすまなかった。
仕方なく、あの太ったアホ……阿呆提督に侘びを入れに行く事になった。

「では団長、今回は俺が行きます」
「阿伏兎は行かなくていい、あのアホ提督が色目使うから」

勘違いも甚だしいと、そのアホ提督が聞いたら言うだろうなと思ったが、
この世渡り下手な上司は断固として自分が行くと言って譲らない。
此方の考えとしては、話をこじらせてはいけないと思い言っているというのに……

「今回は団長だけでは不安なので言っているんです。どうしてもご自分で行きたいというなら、それは構いませんが、俺も同行します」
「……阿伏兎、俺の命令が聞けないの?」

鋭い眼光で見上げられ、何をそんなに行かせたくないのかと疑問に思った。
これも一つの独占欲の表れかと感傷に浸るが、事はそんな理由では片付けられない。

「ええ、聞けませんねぇ。あんたがバカをやらかしては余計に事が面倒になりますから。此処は大人しく任せていただけませんか?」
「阿伏兎のそう言うところが嫌いなんだよ」

やや呆れたように言う神威に、たかがこの程度で嫌いと言われ、逆に呆れたくなった。

「心外ですねぇ。団長のためを思っての行動ですが?」
「そうじゃなくて、鈍感すぎるって言いたいんだよ」
「鈍感? 感覚は鋭い方だと自負しておりますがねぇ?」

予想外の言葉に眉を寄せ返答すると、神威はその言葉を聞きため息をつき、次にニッコリと笑いかけた。


「はい、此処で第一問。アホ提督と一緒にいる時、阿伏兎は何回色目を使われましたか」
「0回」
「ブー、正解は四六時中~」
「選択肢は何回かだろ」
「数えるのも無駄なぐらい使われてるんだよ」

欲目も大概にしろと言いたくなったが、その前に神威はまた質問をしてきた。


「第二問、第八師団勾狼団長は阿伏兎を見るとき何でギラギラした目で見るのでしょうか」
「天人の種「はい、不正解」

せめて最後まで言わせろと、ピキリと青筋が立ちそうになったが、それをぐっとこらえ理由を聞く態勢にした。

「正解は、阿伏兎のことをピーでピーしたいと思ってるから」
「放送禁止用語を使うな!」

逆に、本当にそんな事を想像されていたら鳥肌ものだろと怒鳴りつけたかった。


「第三問、そんな鈍感な阿伏兎が色んな奴から狙われて、俺がどう思うでしょうか?」
「心中穏やかではないでしょうねぇ」
「正解、分かったら大人しくアホ提督には会わない様にしようね」
「はいはい、わかりました……とでも言うと思ってるのかッ、このすっとこどっこい!」

投げ槍に答えたものが正解と言われ、今まで渋々耐えていたが、
全て仮定の中ばかりで言われる理由に納得ができるはずがなかった。

「此処まで言っても分からないんだ」

ムッとしたように睨む神威を同じく睨み返しながら、皮肉を籠めて言い放った。

「少なくとも、ガキの独占欲と欲目で行動するあんたほどではないと思いますがねぇ?」
「へー、そんな風に思ってたんだ」
「違いましたか?」
「いいよ、よーく分かった。鈍感で人の親切も忠告も聞かない阿伏兎に、一つだけいい提案してあげようか?」
「ああ? 何ですかねぇ、団長様」


「一回あのアホ提督か勾狼団長の前でニッコリ笑ってなびく素振りを見せてみなよ。俺と一緒じゃない時だったら絶対に寝室に誘われるか、その場で襲われるから」
「ほぉ、いい提案ですねぇ。ぜひとも試させて頂きましょうか? これでドン引きされたらあんたの考えがゴミ箱行きになりますね」


互いに青筋を立て合い、表面上だけは笑いあいながら。
自分の考えを曲げる気は無かった。



どちらが正しいでしょうか
その答えは、決まっている?


end
(2010/06/15)
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