かむあぶ

「……何だこりゃ?」

首元を圧迫している物を触れば、どうやらソレが首輪のようなものだと分かった。

「あ、起きた阿伏兎?」
「何のまねですかねぇ、団長様」
「何って、首輪つけたら面白いかなって思ったから」

やっぱり似合うね赤いのが、と言われ首輪を触られた。
ニコニコと笑っているのはいつもの事だが、今はその目が満足げに首輪を映していた。


「俺のだって主張されてるみたいで、凄くいいよ阿伏兎」

狂っているわけではない。
純然たる好奇心の結果、自分が納得できるものを発見した子供のようだった。
が、しかし、それを許すわけにはいかなかった。

「アホな事をするな」

無造作に首輪に手をかけ力を籠めれば、非力な革の首輪はあっさりとちぎれた。

「あーあ、こわしたね」
「人の承諾も得ずに勝手につける方が悪いんだろ」

残念そうにちぎれた首輪を見ながら抗議する様言う神威に、首輪を床へと落としながら、その頭を殴ってやろうかと思った。


「じゃあ次は何色にしようか? 俺としてはピンク色とかも良いかなって思うんだけど」
「団長、もしや承諾をとっているお積もりですかねぇ?」
「承諾をとれば良いんだろ?」

問いかけるように言う神威に、ピクリと眉を寄せつつ訊けば、何を今更と言った様子で返された。

「誰がするか、このすっとこどっこい」
「そんな事より、すぐ用意するから今度は俺の下でいっぱい啼いてよ」
「人の話を聞け」



誰がなくか
首輪なんて洒落にもならない。


end
(2010/06/14)
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