かむあぶ
したたかで、自分の手になんか余るはずもない相手を見て、協力したくなったのは。
惚れていたからなのか何なのか、今は考えられるはずもなかった。
「団長」
スタスタと先を歩く神威の後ろを歩きながら声をかけるが返事は無かった。
侍を殺せるから急いている訳でもないのだけは分かるが、一言も口をきかないのがやけに不安にさせる。
「団長、何を怒っているんで?」
反応を待てども何もかえってこない。
これではまるで、自分がバカみたいだとため息をつきたくなった。
「阿伏兎」
「ん?」
「まだ、華陀のこと好き?」
何を言い出すのかと思えば……
先程あれほど否定したことをまだ根に持っていたとは。
「だから、俺は「協力したくなる程度には、好きだったんだろ?」
否定する間もなかった。
此方を見ようともしないのは、それだけ怒っていると言う事か。
「……昔の話だ」
「ふーん、そう」
沈黙が痛かった。
妙な勘ぐりは止めろと怒鳴りつけたかった。
「……団長、どうすれば信じていただけますかねぇ」
「さぁね、自分で考えれば?」
つまり、許す気は当分ないと言うことか……
「あんたのことしか見えていませんと言えば満足か?」
「たりないよ、そんなものじゃ信じられる訳無いだろ」
「だったら、あんたの言うことなら何でもすると誓おうか?」
「誓いはいつか破られるものなんだよ、そんなものを信じろって言うの」
「……俺が、第四師団団長を殺せば、満足か?」
しばしの沈黙、歩くことを止めた神威は、その顔に笑みを貼り付けて、ゆっくりと振り返ってきた。
「そうだね……阿伏兎にできるなら、信じてあげてもいいよ」
できもしないことを言うなと、言われた気がした。
無謀な誓い
賭けるにしても余りにも脆弱。
end
(2010/06/03)
惚れていたからなのか何なのか、今は考えられるはずもなかった。
「団長」
スタスタと先を歩く神威の後ろを歩きながら声をかけるが返事は無かった。
侍を殺せるから急いている訳でもないのだけは分かるが、一言も口をきかないのがやけに不安にさせる。
「団長、何を怒っているんで?」
反応を待てども何もかえってこない。
これではまるで、自分がバカみたいだとため息をつきたくなった。
「阿伏兎」
「ん?」
「まだ、華陀のこと好き?」
何を言い出すのかと思えば……
先程あれほど否定したことをまだ根に持っていたとは。
「だから、俺は「協力したくなる程度には、好きだったんだろ?」
否定する間もなかった。
此方を見ようともしないのは、それだけ怒っていると言う事か。
「……昔の話だ」
「ふーん、そう」
沈黙が痛かった。
妙な勘ぐりは止めろと怒鳴りつけたかった。
「……団長、どうすれば信じていただけますかねぇ」
「さぁね、自分で考えれば?」
つまり、許す気は当分ないと言うことか……
「あんたのことしか見えていませんと言えば満足か?」
「たりないよ、そんなものじゃ信じられる訳無いだろ」
「だったら、あんたの言うことなら何でもすると誓おうか?」
「誓いはいつか破られるものなんだよ、そんなものを信じろって言うの」
「……俺が、第四師団団長を殺せば、満足か?」
しばしの沈黙、歩くことを止めた神威は、その顔に笑みを貼り付けて、ゆっくりと振り返ってきた。
「そうだね……阿伏兎にできるなら、信じてあげてもいいよ」
できもしないことを言うなと、言われた気がした。
無謀な誓い
賭けるにしても余りにも脆弱。
end
(2010/06/03)