かむあぶ

ヒクリと動く首に手をかける。

ミシミシと音が鳴るほどに力を込める。

苦痛に歪む顔が好きだ……



「良い眺めだね、阿伏兎」



力を込めていた手を離すと、阿伏兎は咳き込みながら必死に息をすった。

「何がやりたいんだ……団長」

体を丸めながら咳き込み息を吸っていた阿伏兎は、痣のついた首を手で庇いながら睨んだ。

「別に、のん気に寝てるのがいけないんじゃないの?」
「誰が、上司に寝てるだけで殺されそうになると思うんだ?」

呼吸が落ち着いたところで阿伏兎は痛む喉に手を当てたまま上半身を起こす。


「うわぁ、すごい痣になったね」

夜兎の白い肌にくっきりと残る赤黒い手形。


「どうしてくれんですか、団長様? こんな派手な痕をつけて頂いてくれて」
「良いだろ別に? マントをつければ判んないって」

お気楽に答えれば、ピキリと青筋をたてて阿伏兎が頭を殴ってきた。


「いたいなー酷いだろ? 阿伏兎」
「たく、あんたの考えが解らないねぇ」
「え? 簡単じゃないか答えは」
「はぁ?」



ただ見たかっただけ
苦しむ顔を。


end
(2010/01/23)
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