かむあぶ

「阿伏兎、これ何入れたの?」

舌を出し、顔を顰めながら聞いてくる団長の手には、ついさっき自分が用意して机に置いておいたマグカップがあった。
人がほんの少し目を離した隙に、マグカップの中身は半分まで減っていた。

「人のものに手を出しておきながら、よくもまあ言えたもんですね」
「ホットミルクだと思ったのに、何この味?」
「団長には、まだ酒は早かったですかねぇ」

ブランデーを一垂らしした、と言えば、ふーんそう、と返してきた団長は何を思ったのか、一気にゴクゴクとカップの中身を飲み干した。

「……人の安眠剤代わりを飲まんでください」
「寝酒って睡眠を浅くするんじゃなかった?」
「ホットミルクはよく眠れると聞きますがねぇ?」



矛盾した飲み物
「まあ、どっちでもいいよ、今度は普通のホットミルクもってきて」
「……団長、それは元々俺のだったんですが」


end
(2010/05/20)
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