かむあぶ

春雨ラジオ体操ー
第一師団ー


「何で、朝っぱらからやるんだかねぇ……」


船内に流れる曲にあわせ、気だるげに体を動かしながら、阿伏兎は呟いた。


転生郷を渡す運動ー
弱いものを見下す運動ー


各師団に関わる体操。
これの何処が運動だ、と内心では思いながら、しがない一団員である阿伏兎は周りと同じように適当に体を動かしていった。

春雨ラジオ体操の事の発端は、宇宙海賊春雨内において、運動不足の者と、日頃から戦闘と言う名の運動を行っている者とで歴然とした差が出ていたことが関係していた。
運動不足者の脱メタボ対策として、一日一時間以上の運動を義務付け、不公平が起きない様、日頃から運動をしている者を含め、全師団員参加のラジオ体操を義務付けた。
どうせなら、師団ごとの特徴を捉えた運動が良いのでは? と言う、誰が発したか皆目わからない発言により、各師団に特徴的な運動を書類で提出しろ、と強要し。
現在にいたる……

「くだらないねぇ……」

大半の師団員が、常日頃、戦闘という名の運動を心がけ、メタボのメの字も無いような中。
朝の体操を強要するのにどれほどの意味があるのか、ぜひとも聞きたいところだ。
と、異様に長く感じる体操をしながら阿伏兎は頭の片隅で考えていた。

今日から始まったこの企画。
第七師団員は、まんじりと気だるげに体を動かしながら。
端から必要ないのでは? と言う空気が蔓延していた。


第七師団ー


「ん? ああ、うちの師団のか」

自分の師団名が呼ばれ、せめて自分の師団ぐらいはまともに聞くか、と阿伏兎は耳を澄ませた。


部下を押し倒す運動ー


「はぁ!? おい待てッ、書類にはどうでもいい戦闘での運動を書いたはずだぞ!!」

一人叫ぶ阿伏兎の言葉むなしく、あからさまに危ない言葉が流れる春雨ラジオ体操に一同硬直した。


「阿ー伏兎、さ、ヤろうか?」
「……あんたか団長」

ご丁寧に本当に押し倒しながら笑いかける神威。
そうだった、団長に書類を提出するよう言ったのだった、と今更ながらに阿伏兎は思い出した。


「ほら、早くしないと、どんどん進むだろ?」
「何書きやがった、このすっとこどっこい」
「ん? 勿論、日頃の運動?」



朝の運動
どちらかと言うと、夜の運動?


end
(2010/05/16)
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