かむあぶ

興味本位、それの何処がいけないの?


押し倒され見上げてくる阿伏兎を見下ろしながら、そう言うと。
呆れたようにため息をつき、首を振りながら、さも憂い気に口を開いた。

「嘆かわしい事ですねぇ、一師団の団長ともあろう御人が、こんなおっさんに手を出すなんて……」
「阿伏兎、何が言いたいの?」
「春雨の雷槍と謳われる第七師団団長様……こんなお方に掘られるなんて夢にも思いませんでしたよ」
「アハハ! よく喋る口だね」

少し黙ろうか、と首に手をかけ力を込めると、若干眉を寄せ口を噤んだが、
その目だけはしっかりと見据えてきた。

「ねぇ、阿伏兎、本気で抵抗しないとどうなるか分かってる?」

呼吸困難になってもいいほどに首を圧迫してるのに、ただ見据えてくるだけの阿伏兎に、口元をゆるめながら聞くと、掴んでいた喉が苦笑するかのように震えた。


「……何がそんなに可笑しいのかなぁ、阿伏兎?」


返答を聞くために、力を弱め首から手を離すと、少しの間咳き込むように深く息を吸い、
手をつきながら上半身をゆっくりと起き上がらせた阿伏兎は、笑みを向けてきた。

「団長……できれば俺を失望させんでください」

ゆるやかな苦笑とも嬌笑ともとれる笑みを浮かべた阿伏兎が言葉を紡いだかと思うと、視界が反転した。


「俺をヤろうなんて思うなら、それなりの覚悟を決めんといかんでしょうよ」

押し倒され、先程までとは逆に、首に手をかけられ、同じように力を込められた。

「一発ヤるにしても、脅すにしても、もう少し本気でやって頂かないと興醒めするんでねぇ」

目を細めながら紡がれる言葉は、受け取り方を少し変えれば、壮絶な誘いのように聞こえた。


「団長、興味半分でやるなら、もう少し相手を選びましょう」


オジさん、何事にも本気になっちまうたちなんで、と殺気立ちながら恍惚とした表情で笑みを向ける阿伏兎に、ゾクリと肌が粟立った。



冗談のはて
前言撤回の本気の始まり。


end
(2010/05/05)
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