「きれいですねぇ、いつもながら」


腰の辺りまで続く薄紅色の髪に櫛をいれとかす……間違ってもブチッ、などと言う音を立ててはいけない。
たとえぞんざいに扱われ、キューティクルがいたんでキシキシしていた場合でも、間違っても力を籠めてはいけない。

不揃いになり、三つ編みの途中から一、二本毛先が飛び出している、などと言う状況になった場合。
間違いなく、途中でちぎったね、と難癖をつけられかねないため。
丁寧に、丁寧に……それこそ、全神経を集中させて絡まっている毛先を解す時もある。


「阿伏兎ー、まだ？」
「そう思うなら自分でやれ」
「阿伏兎にやってもらった方が綺麗に整うんだもん」


ニッコリと笑っている所すみませんが団長……
あんたの威圧感が怖いから丁寧にしてんですよ。

いや、わかりますけどね。
お年頃で将来の事を考えてるのもわかりますけどね。

何しろ父親があれですから、ハとゲがつく感じの髪型ですからね。
むしろ、バレバレな人工髪で誤魔化してる感じが、なおさら嫌なのもわかりますけどね……
そこまで神経質にならなくても良いような気がするのは気のせいでしょうかねぇ？


「阿伏兎ー」
「何ですか？」
「神経質は禿げるって本当かな？」


…………今その話題を出しますか、コンチキショー



お年頃
気になるなら、いっそ丸坊主にでもなれ。


end
（2010/05/03）