かむあぶ

「阿ー伏兎」
「もう終わったんですか?」

ボスッと後ろから抱きつき、体重をかけてくる神威に、書類から視線を逸らさず問いかけた。

「つめたいなー、ちゃんと会議中おとなしくしてたのに」
「ほぉー、で、会議の話題は何がありましたか?」
「んー、阿伏兎のこと」
「…………はぁ?」

さっさと話題になっていた断面的な内容を言うかと思った神威の口から意外な言葉が出たため。
今回の会議内容は他師団に聞くしかないのか、と一瞬にして考えた。


「第四師団の華陀と口論になったんだもん」

ぐりぐりと肩口に顔を埋め、深く深呼吸をするように匂いを嗅ぐ神威に、せめて皺になる前に正装を脱げ、とその頭を小突いた阿伏兎は、まさかの第四師団との口論という言葉に軽く驚いた。

「あの美人の団長様とか?」
「阿伏兎、俺以外を団長って言わないでよ」
「それはそれは、失礼しました。で、何でそんな事になったんですかねぇ」

不機嫌そうに口を尖らせる神威が腕に力を籠めるので、首が絞まる前に謝った阿伏兎は、話を戻した。

「だって華陀が、阿伏兎の事欲しいとか、どーせ夜兎の血についてきてるだけだろ、とか言うんだよ?」
「ほぉ……血にねぇ、半分当たりでしたね」
「だから阿伏兎がどれぐらい俺に惚れてるのかを言って、ついでにどれだけ魅力的かを言って、ぐうの音も出ないぐらいにした」
「…………ちなみに、一例を挙げるとどんなこと言いやがった」
「んー? 阿伏兎がどこを触られるとどう反応するかとか、どう扱われると喜ぶかとか」

段々と聞いてた華陀が顔を赤くしてたけどね、とニッコリと笑って言う神威に、机に突っ伏したくなる阿伏兎だった。



口論
「アリ、阿伏兎ーどうしたの?」
「……顔が合わせられなくなっただろ!!」
「よかったね、華陀と用なんて無いだろ」


end
(2010/04/28)
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