かむあぶ
「おや、丁度良い人物に会ったものだ」
孔雀羽の扇を持つ人物が、そう言いながら近づくと、阿伏兎は僅かに眉を寄せたが、すぐに取り繕い社交辞令の笑みを浮かべた。
「これはこれは、第四師団団長様、珍しいですねぇ、こんな所で会うのは」
「なに、少し第七師団団長に用があったので、近くに来たついでに出向いてやった」
「さようですか」
丁寧に対応する阿伏兎を見上げながら、クスリと扇で口元を隠しながら笑った美女は一歩阿伏兎へと近づいた。
「案内してくれんか?」
「貴方と一緒にいる所をうちの団長に見られると、後で煩いんですがねぇ」
「相変わらず振り回されているようじゃな……どうだ、第七師団からわしの所へ来るか? 有能な部下は歓迎するぞ、元々あの神威の下にいるには惜しい存在だ」
「お褒め頂き大変に嬉しいのですが、あいにくと俺は団長の下にしか就かないつもりなんで」
「つくづく夜兎族贔屓な男よ」
鈴を転がすような笑い声を出しながら見上げる相手に、厄介な人物に捕まったものだと阿伏兎は内心愚痴った。
「阿ー伏兎、何楽しげに話してるの?」
「ッ団長……」
後ろから抱きついてきた神威を見下ろしながら、阿伏兎は口元を引きつらせた。
そんな阿伏兎に構わず神威は、阿伏兎が話していた相手を見て冷笑をした。
「何、また色仕掛け? 阿伏兎は俺のだって何回言えば良いのかな?」
「フッ、子供じみた事を言うものだな、第七師団団長神威どの?」
真剣に睨み合う二人、神威にいたっては据わった目で睨みつけていた。
そんな団長達に挟まれ、冷や汗が出てくる阿伏兎は早くこの状況を何とかできないものかと思った。
「すみませんが……第四師団団長様がわざわざ何の御用でしたか」
「ああ、そうだった……この第七師団団長に用事があったな」
無理矢理に阿伏兎が話を振ると、思い出したかのように神威との睨み合いから視線をはずした。
「神威、わしの所の辰羅を随分と殺してくれたそうだな?」
「うん、だって強そうだったから」
「団長! あれほど他師団の部下を殺すなと言ったはずだぞ!?」
「だって夜兎や茶吉尼に並ぶ傭兵部族だよ? 一杯いたら手合わせしたくなるのが普通だろ?」
「ふんッ、後で損害賠償の請求書を送るので無視をするな、用事はこれだけだ」
請求書の言葉に盛大に顔を顰めた阿伏兎を見上げ、また扇で口元を覆いニッコリと笑った。
「第七師団が嫌になったらいつでも来て良いぞ?」
「阿伏兎が行くわけないだろ、俺に惚れてるんだから」
「お前の血にな」
また睨み合いを始める2人に、頭痛のしてきた阿伏兎は、とにかく早くこの状況から逃げ出したいと思っていた。
勧誘問題
『はぁ……早く終われ、このすっとこどっこい』
end
(2010/04/20)
孔雀羽の扇を持つ人物が、そう言いながら近づくと、阿伏兎は僅かに眉を寄せたが、すぐに取り繕い社交辞令の笑みを浮かべた。
「これはこれは、第四師団団長様、珍しいですねぇ、こんな所で会うのは」
「なに、少し第七師団団長に用があったので、近くに来たついでに出向いてやった」
「さようですか」
丁寧に対応する阿伏兎を見上げながら、クスリと扇で口元を隠しながら笑った美女は一歩阿伏兎へと近づいた。
「案内してくれんか?」
「貴方と一緒にいる所をうちの団長に見られると、後で煩いんですがねぇ」
「相変わらず振り回されているようじゃな……どうだ、第七師団からわしの所へ来るか? 有能な部下は歓迎するぞ、元々あの神威の下にいるには惜しい存在だ」
「お褒め頂き大変に嬉しいのですが、あいにくと俺は団長の下にしか就かないつもりなんで」
「つくづく夜兎族贔屓な男よ」
鈴を転がすような笑い声を出しながら見上げる相手に、厄介な人物に捕まったものだと阿伏兎は内心愚痴った。
「阿ー伏兎、何楽しげに話してるの?」
「ッ団長……」
後ろから抱きついてきた神威を見下ろしながら、阿伏兎は口元を引きつらせた。
そんな阿伏兎に構わず神威は、阿伏兎が話していた相手を見て冷笑をした。
「何、また色仕掛け? 阿伏兎は俺のだって何回言えば良いのかな?」
「フッ、子供じみた事を言うものだな、第七師団団長神威どの?」
真剣に睨み合う二人、神威にいたっては据わった目で睨みつけていた。
そんな団長達に挟まれ、冷や汗が出てくる阿伏兎は早くこの状況を何とかできないものかと思った。
「すみませんが……第四師団団長様がわざわざ何の御用でしたか」
「ああ、そうだった……この第七師団団長に用事があったな」
無理矢理に阿伏兎が話を振ると、思い出したかのように神威との睨み合いから視線をはずした。
「神威、わしの所の辰羅を随分と殺してくれたそうだな?」
「うん、だって強そうだったから」
「団長! あれほど他師団の部下を殺すなと言ったはずだぞ!?」
「だって夜兎や茶吉尼に並ぶ傭兵部族だよ? 一杯いたら手合わせしたくなるのが普通だろ?」
「ふんッ、後で損害賠償の請求書を送るので無視をするな、用事はこれだけだ」
請求書の言葉に盛大に顔を顰めた阿伏兎を見上げ、また扇で口元を覆いニッコリと笑った。
「第七師団が嫌になったらいつでも来て良いぞ?」
「阿伏兎が行くわけないだろ、俺に惚れてるんだから」
「お前の血にな」
また睨み合いを始める2人に、頭痛のしてきた阿伏兎は、とにかく早くこの状況から逃げ出したいと思っていた。
勧誘問題
『はぁ……早く終われ、このすっとこどっこい』
end
(2010/04/20)