かむあぶ

「納得いかないなぁ、阿伏兎……俺にもわかるように説明してくれる?」


張り詰めた空気の中、阿伏兎はため息をついて神威へと答えた。

「常識の問題かと思いますがねぇ」
「何が常識だって?」
「何がって……あんた……」

そこまで言ってから、阿伏兎は自分の状況を再確認してから、小さく息を吸い込んだ。


「公衆の面前で押し倒す事が、常識の問題だって言ってるんだ、このすっとこどっこい!!」


キーンと響き渡る声、周りでそ知らぬふりをしていた団員たちはいっせいに耳を塞いだ。

「ひどいなー、そんなに怒鳴らなくても聞こえてるよ? どうせ声を出すなら、あえぎ声の方が好きなんだけど?」
「どけ! このバカ団長!!」

押し倒してきた神威の頭を掴み、力ずくでどかそうと阿伏兎は腕に力を込めた。

「どくわけ無いだろ? だってほら、公衆の面前でって阿伏兎は言ってるけど、みんなこっちの事なんか気にしてないだろ?」
「気にしてない振りしてるだけだ! 服を脱がそうとするな! 硬くなってるもんを押し付けるな!!」

頭を掴まれているにも係わらず、阿伏兎の服を脱がそうとする神威。
怒鳴りながらも近づけさせまいと自分の腕に力を込める阿伏兎。

周りでそ知らぬふりに徹している団員たちは。
他の師団へ行こうかと、涙ながらに考えていた。



常識の問題
常識って、何ですか……?


end
(2010/03/12)
19/100ページ