かむあぶ

誰にも不機嫌になりやすい時がある。
そして、不機嫌な時にキレるのは、ほんの些細な事である……

さて、ここに不機嫌な男がいる。
何故不機嫌かと言うと、睡眠不足やストレス他、色々な事が挙げられるほど原因としては多数あった。

今にも眠ってしまいそうな目を必死に開け。
まだ終わらぬ今からの仕事を考え頭痛のする頭を抱えて歩いていた男の前に。
幸せそうにバカ騒ぎをしていた団員たちがいたとして、男がキレるのは至極まっとうな事ではないのだろうか?



「何やってるの?」
「団長!? 助けてください!!」

血まみれな者や、顔が腫れ上がっている者、壁へとめり込んでいる者
そんな部下達を前に上司である神威はケラケラと笑いながら見ているだけだった。
その様子に、上司の登場に一筋の希望を抱いていた団員たちは、絶望の淵へと立たされた。

「本当、何面白そうなことしてるの?」

笑いながら聞くと、目の前にいた団員が蹴り飛ばされた。


「うわぁ……阿伏兎、どうしたの? すごくそそられるよ、その顔」

目が据わり、殺気立っている人物に対して言う言葉ではない。
しかし、恍惚とした表情で神威は阿伏兎を見ながら言った。



「……ああ、団長ですか」
「アリ? もうお終い?」
「あらかた気は済みましたんでね」

神威を見た瞬間に殺気を抑えた阿伏兎は、据わっていた目も眠そうな目に変わり、気だるげな様子で周囲を見た。
そんな阿伏兎に、あからさまに残念がる神威

「はぁ、もっと早く来てればよかったなー」

そうすれば、少し本気の阿伏兎と手合わせできたのに、とつぶやく神威を眉を顰めながら睨んだ。

「誰のせいだと思ってるんですか? かわいそうに、団員たちがとばっちりを受けた」
「阿伏兎がやったんだろ?」
「原因は団長ですよ」

その後も話し続ける2人に、瀕死の団員たちは、早く医療班を呼んでくれと願い続けた。



周りなんて気にしません
興味の無いことですから。


end
(2010/02/18)
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