かむあぶ

「阿伏兎、コレがやりたいなー」


テレビを見ていた神威が唐突に振り返り、笑いながら注文をしてきた。

「……ソレですか?」
「うん」

テレビに映っていたのは、滝のように流れ出てくるチョコレートを果物や菓子につけて食べている、
いわゆるチョコレートフォンデュの様子。


「地球には変わった食べ方があるもんだな」
「早く用意してよ、十秒以内に」
「……あんたなぁ、チョコレートを用意して溶かすだけで、どれだけかかると思ってるんだ?」
「ん~、じゃぁ、できるだけ早く用意してよ」
「はぁ……分かりましたよ」

いつもながら、我が団長様は無茶な注文しやがる、と内心で愚痴りながら言葉を返した。

「で、つけるものは何を用意しましょうかねぇ団長様?」
「そんなのいらないから、早くチョコだけ用意してよ」

皮肉を込めて丁寧に聞くと、あっさりと笑いながら返された。


「……は?」
「だって、つけるのは阿伏兎がいれば十分だから」

爽やかに微笑む神威の顔目掛けて、近くにあった机を投げたのは五秒後の事だった。



つけるものは
セルフで用意します。


end
(2010/02/14)
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