かむあぶ 2
とある星から仔兎が宇宙海賊春雨に入団し、弟子となってから数週間。
むすっとした硬い表情でいる子供に対し鳳仙は言葉を投げかけた。
「随分と機嫌が悪そうだな、神威よ」
「そう見えますか?」
「今日はアレがいないのが不満か?」
「やだなァ、師匠。阿伏兎がいないぐらいで俺の機嫌が悪くなるなんて」
「誰も名は言っておらんが」
「…………」
完全に墓穴を掘った子供が気まずげに視線を外し黙り込む様子を眺め。
仔兎をからかうのはこの程度にしておくかと鳳仙は鼻で笑った。
「聞いているぞ、神威よ。アレと手合わせをしようと必死らしいな」
「……仕事を理由に断られますけど」
「わしにアレの仕事を減らすように言いに来たのか?」
「だって、師匠が休日でも仕事を言いつけてるんでしょ?」
「わしは一言も言っておらん」
「阿伏兎は師匠の言いつけが怖いからって言ってましたけど」
「アレが好き好んでやっているだけだ。わしから言ったことは一度もない」
聞くが早いか師への退席の挨拶もそこそこに仔兎は部屋を出ていき。
随分と感情が出るようになったものだと鳳仙は弟子を見送った。
歩くというには早いペースで春雨の基地内を踏破し。
舐めた態度で喧嘩を売ってくる雑魚天人を痛めつけながら聞き回り。
ようやく見つけた相手の前に子供は立ち塞がった。
「何の用だ? 鳳仙の旦那のお弟子さん」
「聞いたよ、うそつき」
「唐突に人の進行を止めておきながらうそつき呼ばわりか?」
「仕事なんて言いつけられてないだろ」
長身の相手を見上げ、軽く睨みながら子供が言えば、相手は面白がるように笑った。
「何だ、もうばれたのか」
「仕事がないなら俺の手合わせの相手をしてよ」
「ガキの遊びに付き合ってられるほど、暇じゃないんでね」
そこらの暇してる連中にでも遊んでもらえと言い含め、阿伏兎はさっさと横を通り抜け。
相手にされもしない態度をとられ、神威は歯を嚙み締めた。
「待てよ」
「――放せよ、お弟子さん」
すり抜けざまに外套の端を掴まれ足を止めた阿伏兎は子供を見下ろし。
何をそんなに執着すものかと眉をひそめた。
いつまで経っても師の鳳仙の他には自分ぐらいとしか春雨内でろくに関わろうとしない仔兎。
最近は少しばかり子供らしい様子が出始めているのを見越し、他と関わらないかと距離をとってみたが。
目論みはご破算。結局のところは無駄骨に終わった。
もう少しばかり突き放すべきかと逡巡したが、あまり虐めるのも酷かと結論付け。
本当に、なぜこんなにも懐きやがったのかと爆発寸前の子供を眺め阿伏兎は長々とため息を吐いた。
「…………ったくしょうがねぇな」
「え? うわっ…!?」
「そんな怖い顔で遊びに誘うもんじゃねーぜ仔兎」
「ちょっ、頭なでるなよ!」
「もっとニコニコ顔で誘えんもんかねぇ?」
「はぁ?! 俺が笑顔でいても意味ないだろ!」
「あ? せっかくの男前になりそうな面が泣くぞ」
まったくもって嘆かわしいと茶化しながら、阿伏兎は子供の頭を雑に撫で。
毒気が抜け爆発寸前から最近は良く見るようになった年相応の反応に変わったことに苦笑し。
今はまだ突き放すには早かったが、その内にこの仔兎からの執着も薄れてくだろうと楽観視した。
「お前さんなら将来、笑顔を浮かべてれば一発で遊びのお誘いだらけだぜ?」
笑顔が一番
さしあたって怖い顔は止めさせるかと模索する。
end
(2025/03/31)
むすっとした硬い表情でいる子供に対し鳳仙は言葉を投げかけた。
「随分と機嫌が悪そうだな、神威よ」
「そう見えますか?」
「今日はアレがいないのが不満か?」
「やだなァ、師匠。阿伏兎がいないぐらいで俺の機嫌が悪くなるなんて」
「誰も名は言っておらんが」
「…………」
完全に墓穴を掘った子供が気まずげに視線を外し黙り込む様子を眺め。
仔兎をからかうのはこの程度にしておくかと鳳仙は鼻で笑った。
「聞いているぞ、神威よ。アレと手合わせをしようと必死らしいな」
「……仕事を理由に断られますけど」
「わしにアレの仕事を減らすように言いに来たのか?」
「だって、師匠が休日でも仕事を言いつけてるんでしょ?」
「わしは一言も言っておらん」
「阿伏兎は師匠の言いつけが怖いからって言ってましたけど」
「アレが好き好んでやっているだけだ。わしから言ったことは一度もない」
聞くが早いか師への退席の挨拶もそこそこに仔兎は部屋を出ていき。
随分と感情が出るようになったものだと鳳仙は弟子を見送った。
歩くというには早いペースで春雨の基地内を踏破し。
舐めた態度で喧嘩を売ってくる雑魚天人を痛めつけながら聞き回り。
ようやく見つけた相手の前に子供は立ち塞がった。
「何の用だ? 鳳仙の旦那のお弟子さん」
「聞いたよ、うそつき」
「唐突に人の進行を止めておきながらうそつき呼ばわりか?」
「仕事なんて言いつけられてないだろ」
長身の相手を見上げ、軽く睨みながら子供が言えば、相手は面白がるように笑った。
「何だ、もうばれたのか」
「仕事がないなら俺の手合わせの相手をしてよ」
「ガキの遊びに付き合ってられるほど、暇じゃないんでね」
そこらの暇してる連中にでも遊んでもらえと言い含め、阿伏兎はさっさと横を通り抜け。
相手にされもしない態度をとられ、神威は歯を嚙み締めた。
「待てよ」
「――放せよ、お弟子さん」
すり抜けざまに外套の端を掴まれ足を止めた阿伏兎は子供を見下ろし。
何をそんなに執着すものかと眉をひそめた。
いつまで経っても師の鳳仙の他には自分ぐらいとしか春雨内でろくに関わろうとしない仔兎。
最近は少しばかり子供らしい様子が出始めているのを見越し、他と関わらないかと距離をとってみたが。
目論みはご破算。結局のところは無駄骨に終わった。
もう少しばかり突き放すべきかと逡巡したが、あまり虐めるのも酷かと結論付け。
本当に、なぜこんなにも懐きやがったのかと爆発寸前の子供を眺め阿伏兎は長々とため息を吐いた。
「…………ったくしょうがねぇな」
「え? うわっ…!?」
「そんな怖い顔で遊びに誘うもんじゃねーぜ仔兎」
「ちょっ、頭なでるなよ!」
「もっとニコニコ顔で誘えんもんかねぇ?」
「はぁ?! 俺が笑顔でいても意味ないだろ!」
「あ? せっかくの男前になりそうな面が泣くぞ」
まったくもって嘆かわしいと茶化しながら、阿伏兎は子供の頭を雑に撫で。
毒気が抜け爆発寸前から最近は良く見るようになった年相応の反応に変わったことに苦笑し。
今はまだ突き放すには早かったが、その内にこの仔兎からの執着も薄れてくだろうと楽観視した。
「お前さんなら将来、笑顔を浮かべてれば一発で遊びのお誘いだらけだぜ?」
笑顔が一番
さしあたって怖い顔は止めさせるかと模索する。
end
(2025/03/31)
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