断片話

◆吉原帰還ぎわにて


「どうかしたの阿伏兎? さっきからずっと俺の顔見てくるけど」
「いや、今更ながら、あんたに妹さんがいるとはなと思ってな」
「そんなに意外? 俺に妹がいたって」
「そりゃそうだろ。ガキの頃のあんたなんざ一人っ子だろうなとずっと思ってたぜ」

そのイメージが強すぎたと阿伏兎は皮肉り。
鳳仙の弟子となってからずっと阿伏兎を遊び相手にしていた神威は口を尖らせた。

「なんだよまだ根に持ってるの?」
「四六時中、やれ遊べだ事の手合わせしようだ事の、こっちの都合を考えんかったガキが。まさか妹さんがいるお兄ちゃんだったとは思わんだろ」
「故郷ではちゃんとお兄ちゃんしてたよ」
「どうだかな」


(2016/02/02)
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