断片話
◆逃避行未満
「いっその事、愛の逃避行にでもしゃれ込もうか、阿伏兎?」
「ついに頭でもイカレたか? このすっとこどっこい」
「別に? ただこうも荒れ地ばかりを歩いてると段々と船に戻るのが億劫になってきてさ」
「あんたが一人で戦場に行きたいだ何だと駄々をこねたのが悪い」
こんな荒地を延々と歩くのも、ひとえに上司様の我儘が原因。
そうでなければ送り迎えぐらいはついた。
「どう? 阿伏兎。俺と一緒に愛の逃避行」
「はいはい。あと二日ほど一緒に歩き続ければ船に着きますよ」
「その反応は本気にしてないね?」
「じゃあ訊くが。団長様は愛の逃避行とやらの先に何を見るんで?」
「それは、眼前に広がる新たな戦場かな」
「ほぉ、随分と血生臭い愛の逃避行なもんで」
笑いがこみあげてきてたまらなかった。
何もない荒地をただ延々と歩いているだけのこの数日は、随分と団長にはストレスだったようだ。
「愛の逃避行、阿伏兎は反対?」
「最強の夜兎と二人っきり、なんてのは確かに魅力的だが。あと二日でつく夜兎族が沢山いる所もまた、心ひかれるものがあるんでね」
「ふーん、俺一人と師団の夜兎族全員は同価値?」
「さて、どうだろうな」
(2015/04/29)
「いっその事、愛の逃避行にでもしゃれ込もうか、阿伏兎?」
「ついに頭でもイカレたか? このすっとこどっこい」
「別に? ただこうも荒れ地ばかりを歩いてると段々と船に戻るのが億劫になってきてさ」
「あんたが一人で戦場に行きたいだ何だと駄々をこねたのが悪い」
こんな荒地を延々と歩くのも、ひとえに上司様の我儘が原因。
そうでなければ送り迎えぐらいはついた。
「どう? 阿伏兎。俺と一緒に愛の逃避行」
「はいはい。あと二日ほど一緒に歩き続ければ船に着きますよ」
「その反応は本気にしてないね?」
「じゃあ訊くが。団長様は愛の逃避行とやらの先に何を見るんで?」
「それは、眼前に広がる新たな戦場かな」
「ほぉ、随分と血生臭い愛の逃避行なもんで」
笑いがこみあげてきてたまらなかった。
何もない荒地をただ延々と歩いているだけのこの数日は、随分と団長にはストレスだったようだ。
「愛の逃避行、阿伏兎は反対?」
「最強の夜兎と二人っきり、なんてのは確かに魅力的だが。あと二日でつく夜兎族が沢山いる所もまた、心ひかれるものがあるんでね」
「ふーん、俺一人と師団の夜兎族全員は同価値?」
「さて、どうだろうな」
(2015/04/29)