銀阿
「どーしても探してほしいウサギがいてのォ」
間延びした依頼をするハタ皇子は抱いていた子猫を撫でた。
その用件を聞き、銀時は相槌をうちながら言葉を返した。
「ウサギって言うとバニーガール的な?」
「いやちげーよ。余が欲しいのは伝説のウサギだから、そこら辺の地球人がうさ耳付けたのじゃないから」
「バカ皇子も隅に置けませんね。いい所を紹介しますんで今日はとっとと帰ってもらえませんか」
「バカじゃないから、ハタだから。それと人の話し聞けよ、バニーガールじゃねーつってんだろ」
まったく、と嘆息してからハタ皇子は逃げ出そうとする子猫を抱え直した。
帰りそうにもない様子に、銀時は隣に控えていた新八へと小声で話しかけた。
「おいおい、勘弁してくれよ。もうすぐ阿伏兎が来る時間だってのに何でウサギ探しなんかしなきゃなんねーんだよ」
「ちょっと銀さん、仮にも依頼人の前ですよ」
「そうは言うけどな、伝説のウサギって何? ウサギなんてそこら辺に一杯いるだろ、探す意味がわかんねーよ」
「いや、だから伝説のウサギなんだろ。そこら辺にいるのは普通のウサギだからだろ」
「何コソコソと話をしとるおぬしら? 本当は余もこんな所に頼むのは不本意なんじゃ」
「不本意ならよそ行けよコノヤロー」
「銀さん! 本音出てますよ!?」
無意識に悪態をつく銀時。
慌てて新八がいさめるが、特に気にした様子もなくハタ皇子は話しを続けた。
「まったく、じいも使えんものよ。余が伝説のウサギを連れて来いと命令したらうさ耳付けたオッサンを連れて来よったんじゃ」
「オッサンのうさ耳とかきつくね?」
「きっと苦し紛れだったんですよ」
「余のウサちゃんはどこにいるのかのォ。絶滅危惧種のようで早く保護をしたいのじゃが」
憂いげにため息を吐きながらハタ皇子は全力で嫌がる子猫を撫でた。
しつこく居座るハタ皇子は帰りそうになかった。
銀時は髪をガリガリと掻きながら仕方なく依頼を聞くことにした。
「とりあえず探すのは後日にするとして」
「いや、まだ余は何も了解してないよね? 後日にまわしてもいいとか言ってないよね?」
「まずはその伝説のウサギの特徴が必要だろ」
「聞けよ、余の話し全力で無視か?」
だから地球人は嫌なんじゃ、と言いつつもハタ皇子は懐から写真を出した。
机の上に置かれた写真を、銀時と新八は覗き込んだ。
「生憎と伝説のウサギは文献もろくに残っていなくてのぉ。唯一その写真が伝説のウサギの像を写したものなんじゃ」
写真には一つのブロンズ像が写されていた。
足元には三日月、口には番傘をくわえた跳びはねる寸前のウサギの像。
じっと写真を眺める二人は、見覚えのある像に沈黙してからヒソヒソと話し始めた。
「……銀さん、これって」
「言うな新八。とーっても見覚えがあっても気のせいだ」
「いや、あの……同じものを見た気がするんですけど」
「気のせいだ。きっとこれはアレだ、ほらアレ、傘みたいのをくわえてるけど、きっと人参のつもりなんだろ」
「何処の世界に人参の代わりに傘くわえるウサギがいるんですか」
ヒソヒソと話し合う二人をさして気にもとめず、ハタ皇子は口を開いた。
「地球の吉原とやらに置いてあったそうじゃ。最悪、伝説のウサギが手に入らなかったらその像だけでもと思ってたが、随分と前に壊されたようでのぉ」
惜しいこともあったものじゃ、と嘆かわしく呟いたハタ皇子。
「伝説のウサギは夜兎と言うらしくての。日の光に弱いらしく外見は真っ白。いかにもはかなげな特徴じゃろ?」
別の意味で夜兎族を知っている銀時と新八は沈黙した。
「銀ちゃ~ん。阿伏兎が来たアル、茶ぐらいさっさと出せよ」
「客がいるらしいぞ嬢ちゃん、あまり無理を言わん方がいいと思うが?」
玄関から居間へと向かっていた途中の神楽は、阿伏兎の言葉に振り返った。
「遠慮しすぎネ、阿「で、余の依頼受けてくれるかのぉ。夜兎を飼いたいんじゃ」
居間の入口手前で止まる神楽にようやく追いついた阿伏兎。
沈黙をする神楽に何かあったのかと眉を寄せた。
「阿伏兎、ちょっと携帯電話貸すヨロシ」
「どうした嬢ちゃん?」
「いいから貸すネ、神威に言うことがあるヨ」
有無を言わせない雰囲気の神楽に阿伏兎は疑問に思いながらも電話を手渡した。
さっそくかけた電話は、数秒で繋がった。
『どうかした阿伏「さっさと出ろよバカ兄貴。三分以内にパピーに私が変態に狙われてるって連絡するネ。――グダグダ言ってないで早くしろヨ、阿伏兎が変態に飼われてもいいアルか?」
「嬢ちゃん? 何を……」
「神楽ちゃん! それ地球滅亡スイッチィイイイ!!」
「考え直せ神楽ァァアアア!!」
バタバタと慌てて止めに入る新八と銀時。
とっくに電話を切った神楽は不機嫌になりながら銀時達を見た。
「うるさいネ。変な依頼受けようとする銀ちゃん達も同罪アル」
「違う! 受けてないから! どう断ろうか考えてただけだから!!」
「このままじゃ宇宙の掃除屋と春雨のタッグバトルが勃発するだろォオオ!?」
慌ただしく説得する様子に阿伏兎は呆れながら口を開いた。
「旦那、心配しなくても団長が手間のかかることをする訳が」
「むおっ、パピーアルか?」
神楽の言葉に阿伏兎は黙った。
見れば、折り返しの電話に出ている神楽がいた。
「そうネ、夜兎飼いたいって言う変態が万事屋に来たヨ」
普通に春雨専用の電話で会話を続ける神楽。
星海坊主が電話に出ている意味を考えた阿伏兎は、行動の早過ぎる神威に対し呆れながら呟いた。
「そこまでシスコンだったのか団長……」
「パピー達はすぐ地球に来るみたいアル」
「「カウントダウン始まったァアア!?」」
慌しい廊下をよそに、一人居間に残されたハタ皇子はポツリと呟いた。
「ところで、余の依頼どうなったのじゃ?」
空気扱い
依頼人は大切に?
end
(2011/04/29)
間延びした依頼をするハタ皇子は抱いていた子猫を撫でた。
その用件を聞き、銀時は相槌をうちながら言葉を返した。
「ウサギって言うとバニーガール的な?」
「いやちげーよ。余が欲しいのは伝説のウサギだから、そこら辺の地球人がうさ耳付けたのじゃないから」
「バカ皇子も隅に置けませんね。いい所を紹介しますんで今日はとっとと帰ってもらえませんか」
「バカじゃないから、ハタだから。それと人の話し聞けよ、バニーガールじゃねーつってんだろ」
まったく、と嘆息してからハタ皇子は逃げ出そうとする子猫を抱え直した。
帰りそうにもない様子に、銀時は隣に控えていた新八へと小声で話しかけた。
「おいおい、勘弁してくれよ。もうすぐ阿伏兎が来る時間だってのに何でウサギ探しなんかしなきゃなんねーんだよ」
「ちょっと銀さん、仮にも依頼人の前ですよ」
「そうは言うけどな、伝説のウサギって何? ウサギなんてそこら辺に一杯いるだろ、探す意味がわかんねーよ」
「いや、だから伝説のウサギなんだろ。そこら辺にいるのは普通のウサギだからだろ」
「何コソコソと話をしとるおぬしら? 本当は余もこんな所に頼むのは不本意なんじゃ」
「不本意ならよそ行けよコノヤロー」
「銀さん! 本音出てますよ!?」
無意識に悪態をつく銀時。
慌てて新八がいさめるが、特に気にした様子もなくハタ皇子は話しを続けた。
「まったく、じいも使えんものよ。余が伝説のウサギを連れて来いと命令したらうさ耳付けたオッサンを連れて来よったんじゃ」
「オッサンのうさ耳とかきつくね?」
「きっと苦し紛れだったんですよ」
「余のウサちゃんはどこにいるのかのォ。絶滅危惧種のようで早く保護をしたいのじゃが」
憂いげにため息を吐きながらハタ皇子は全力で嫌がる子猫を撫でた。
しつこく居座るハタ皇子は帰りそうになかった。
銀時は髪をガリガリと掻きながら仕方なく依頼を聞くことにした。
「とりあえず探すのは後日にするとして」
「いや、まだ余は何も了解してないよね? 後日にまわしてもいいとか言ってないよね?」
「まずはその伝説のウサギの特徴が必要だろ」
「聞けよ、余の話し全力で無視か?」
だから地球人は嫌なんじゃ、と言いつつもハタ皇子は懐から写真を出した。
机の上に置かれた写真を、銀時と新八は覗き込んだ。
「生憎と伝説のウサギは文献もろくに残っていなくてのぉ。唯一その写真が伝説のウサギの像を写したものなんじゃ」
写真には一つのブロンズ像が写されていた。
足元には三日月、口には番傘をくわえた跳びはねる寸前のウサギの像。
じっと写真を眺める二人は、見覚えのある像に沈黙してからヒソヒソと話し始めた。
「……銀さん、これって」
「言うな新八。とーっても見覚えがあっても気のせいだ」
「いや、あの……同じものを見た気がするんですけど」
「気のせいだ。きっとこれはアレだ、ほらアレ、傘みたいのをくわえてるけど、きっと人参のつもりなんだろ」
「何処の世界に人参の代わりに傘くわえるウサギがいるんですか」
ヒソヒソと話し合う二人をさして気にもとめず、ハタ皇子は口を開いた。
「地球の吉原とやらに置いてあったそうじゃ。最悪、伝説のウサギが手に入らなかったらその像だけでもと思ってたが、随分と前に壊されたようでのぉ」
惜しいこともあったものじゃ、と嘆かわしく呟いたハタ皇子。
「伝説のウサギは夜兎と言うらしくての。日の光に弱いらしく外見は真っ白。いかにもはかなげな特徴じゃろ?」
別の意味で夜兎族を知っている銀時と新八は沈黙した。
「銀ちゃ~ん。阿伏兎が来たアル、茶ぐらいさっさと出せよ」
「客がいるらしいぞ嬢ちゃん、あまり無理を言わん方がいいと思うが?」
玄関から居間へと向かっていた途中の神楽は、阿伏兎の言葉に振り返った。
「遠慮しすぎネ、阿「で、余の依頼受けてくれるかのぉ。夜兎を飼いたいんじゃ」
居間の入口手前で止まる神楽にようやく追いついた阿伏兎。
沈黙をする神楽に何かあったのかと眉を寄せた。
「阿伏兎、ちょっと携帯電話貸すヨロシ」
「どうした嬢ちゃん?」
「いいから貸すネ、神威に言うことがあるヨ」
有無を言わせない雰囲気の神楽に阿伏兎は疑問に思いながらも電話を手渡した。
さっそくかけた電話は、数秒で繋がった。
『どうかした阿伏「さっさと出ろよバカ兄貴。三分以内にパピーに私が変態に狙われてるって連絡するネ。――グダグダ言ってないで早くしろヨ、阿伏兎が変態に飼われてもいいアルか?」
「嬢ちゃん? 何を……」
「神楽ちゃん! それ地球滅亡スイッチィイイイ!!」
「考え直せ神楽ァァアアア!!」
バタバタと慌てて止めに入る新八と銀時。
とっくに電話を切った神楽は不機嫌になりながら銀時達を見た。
「うるさいネ。変な依頼受けようとする銀ちゃん達も同罪アル」
「違う! 受けてないから! どう断ろうか考えてただけだから!!」
「このままじゃ宇宙の掃除屋と春雨のタッグバトルが勃発するだろォオオ!?」
慌ただしく説得する様子に阿伏兎は呆れながら口を開いた。
「旦那、心配しなくても団長が手間のかかることをする訳が」
「むおっ、パピーアルか?」
神楽の言葉に阿伏兎は黙った。
見れば、折り返しの電話に出ている神楽がいた。
「そうネ、夜兎飼いたいって言う変態が万事屋に来たヨ」
普通に春雨専用の電話で会話を続ける神楽。
星海坊主が電話に出ている意味を考えた阿伏兎は、行動の早過ぎる神威に対し呆れながら呟いた。
「そこまでシスコンだったのか団長……」
「パピー達はすぐ地球に来るみたいアル」
「「カウントダウン始まったァアア!?」」
慌しい廊下をよそに、一人居間に残されたハタ皇子はポツリと呟いた。
「ところで、余の依頼どうなったのじゃ?」
空気扱い
依頼人は大切に?
end
(2011/04/29)