断片話

◆白い蛮族
(白夜叉銀時×若阿伏兎)

「たく、鳳仙の旦那も人使いの荒い」

すげなく対応され、上との関わりなど取る気も媚びへつらう気もないと言われた。
それをどう上に報告するかは丸投げ状態でだ。
ただ一言、帰りには地上にいる侍どもに気をつけろと言われただけだった。
暴君と言ってもいいほどの態度、それを許すのは絶対的な力。
同じ種族に名を連ねてはいるが、夜王とまで言われた夜兎族の頂点との差など、天と地ほどもある。

「『侍』ねぇ? 地球の蛮族に気をつけろなんて、とてもお優しい忠告、心に響きますよコンチクショー」

春雨に戻る道中、限りなく足取りが重かった。



此方が真っ黒だとすれば、相手は真っ白だった。

「あんた、天人か?」
「仮に、此処で地球人だと言って、お前さんは信じるのかい?」

地球人に雨も降らないのに傘をさす習慣がある訳がない。
特徴的とも言っていい白肌に番傘。
どれも夜兎族ですと名札を付けて歩いているようなものだった。
暫く互いに見据えあい、先に相手が刀を下した。

「天人にも、好戦的じゃないのがいるんだな」
「そりゃ……」

何かの間違いだろ、と真逆の感想を言われ言い返したくなったが、黙っておいた。
勝手に勘違いした方が悪い。



「地球人は、何処までいっても頭が悪い」

どうしてそこまで奪われたものを取り返そうとするのか。
二度と目にすることのないであろう白い背。
仲間と共に駆け出した侍と呼ばれる地球人は、先の見えない戦いへと向かうのだろう。

「ビジネスでもねぇのに戦場に向かうなんざ、物好きな奴だ」

血の匂い煙る戦場。
そんなモノ、今や夜兎族ですら仕事でしか向かわない。

「馬鹿な蛮族だ」


(2014/02/09)
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