断片話

◆最後の船 
(注:映画設定で捏造)

「結局、あの嬢ちゃんは、アンタの手を取らなかったのか?」
「まったく、馬鹿な話だよね」

原因不明、地球に蔓延した死病。
裕福な者だけが地球から逃げ出してきた。


「地球の価値はダダ下がり、元老もとっくに見切りをつけてる。今回を逃せば、春雨の戦艦を地球に動かす事は二度と出来んぞ?」
「あのお侍さんが、帰ってくるのを待ってるんだってさ」
「ほぉ、健気だねぇ」

あの侍の為に、兄の手を振り払ったのかと感心したように阿伏兎は呟いた。
それに対し、名残惜しそうに神威は地球を眺めた。

「馬鹿な妹だよ、まったく」
「アンタでも、家族愛なんてのがあったんだな?」
「教えてくれたのはあのお侍さんだったのにネ」


もう行こうか、と荒廃した地球を背に歩き出した。


(2013/07/13)
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