銀阿

「久しいな、銀時」

五芒星が描かれた扇を片手に挨拶をする相手。
公家顔の相手に銀時は思い出したようにポンと手を打った。

「ああ、たまたま」
「誰がたまたまじゃ! 相変わらず失礼な奴だ」

一瞬で噴火した怒りを納め、冷静な態度に戻った晴明は一息ついた。


「で? お兄たまは何でかぶき町へ?」
「誰がお兄たまじゃ! お前の兄になった覚えはない!! って、話が進まんじゃろ!!」
「いやー、何て言うか本当に珍しくって、つい。ところで、本当の所なんで外に?」
「うむ、わしは少しクリステルのフィギュアを買いにだな……」

ポッと頬を染めながら口元を扇で隠し、最後は口ごもる晴明。
その内容に銀時は、ふむふむと相槌を打ちながら口を開いた。

「はぁ~なるほど。相変わらずのシスコンですね。シスたま」
「誰がシスたまじゃ! もはや原型留めてないよねそれ!?」

「と、言うか。結野アナのフィギュアならけっこー前にあったような」
「なにを言う! 今度のフィギュアは休日バージョン! クリステルの愛犬ラストオブモヒカンリビングオブザデッドマクガフィンが付いてるんじゃぞ!!」
「つーかよく覚えられたなその名前!?」
「クリステルがつけた名前じゃ! わしに覚えられん事はない!!」

熱く熱弁をした後、別れ際に思い出したように晴明は銀時へと振り返った。

「あまり公私混同はしたくはないが、世話になったからな。いちおう警告はしておく。銀時よ、御主にピンク色難の相が出ているぞ」
「は?」
「正確に言えば、ピンク色に関係するものにより一番会いたいと思っている人物とは会えない相だ。特に番傘を持ったチャイナ服の大柄な人物には会えない」
「何その具体的かつ会えない人物がピンポイントな相?!」
「気をつけよ銀時。ちなみに、わしの占いは百発百中じゃ」
「さらに追い撃ちィイイイ!?」

さらりと重要な項目を言った晴明は相手の叫びを軽く流し、スタスタと歩いて行った。



万事屋へ戻った銀時は、不吉過ぎた晴明の言葉に気分が沈んだままだった。
まるで見抜いたかのような予想。

実際問題、今日の午後に会える予定の人物に関わっている所がさらに恐ろしかった。


「不吉な報告だけして不安煽らせるなっての」

落ち着きを取り取り戻すため、いったん何かを飲もうかと台所へと行った。

何かあったかと冷蔵庫を開けた後、何気なく目に映った紙パックへと手を伸ばした。
紙パックの口を開け、いざ飲もうとして手を止めた。


「ま、まさか、いちご牛乳か!? いちご牛乳が傷んでてそれを飲んで救急車行きか?!」

紙パックに刻印された期限を確認し、すでに10日以上過ぎている事にピンク色難の相の信憑性が増した。
いちご牛乳を後日にまわすことにした銀時は、部屋の中をぐるぐると歩きながら考えた。

「ピンク、ピンク……ピンク映画? AV系か!? いいかんじの時にそれが偶然発見されて興醒めされる展開か!?」

部屋中に隠していた本やビデオをかき集めダンボール箱に詰め込んだ銀時は、箱を押入れの中に蹴り入れた。
処理が終わった頃に、風呂敷包みを持った新八がリビングへと歩いてきた。


「銀さん、ちょっと良いですか?」
「よ、よう新八君……な、何か用かな?」
「息切らせながら何カッコつけてんだよ……いや、それが、姉上がくじ引きで嫌なのを当てたから処分してほしいって」
「へー、アレか? 服のサイズの一部分が合わな過ぎるのを当てたってか?」
「殺されるぞアンタ……まあ、似たようなものかもしれませんけど。まったく、ジョークグッズにしても女性にこんなの渡すのって軽くセクハラですよね。おかげで姉上が随分怒っちゃって大変でしたよ」

風呂敷包みを広げながら話す新八。
机の上に広げられた物を見た瞬間、銀時は青ざめた。

「ピンク色ォオオオ!?」



銀時が万事屋で叫んでいる時、専門店のレジでフィギュアを受け取っていた晴明は、はっと思い出したように呟いた。


「しまった、あやつにおさげ髪難の相も出ていた事を言い忘れていた……ま、かまわんか」



占い
当たらぬも八卦?


end
(2011/02/07)
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