銀阿
「だから、テレビ出演なのに急に人手が足りなくなったのよ。と言うわけでパー子出陣してくれるわよね?」
「おいおい、冗談は顔だけにしとけよ。誰が全宇宙版の紹介に醜態晒すかよ」
マドマーゼル西郷の頼みを断る銀時。
その様子を見ていた阿伏兎は、隣にいる新八に質問した。
「あれは天人か?」
「あはは……言わない方が良いですよ、特に西郷さんの前では……」
「いや……どう見ても化」
け物だろ、と続けようとした阿伏兎の口を必死に新八は押さえた。
「だからダメです! その言葉は禁句なんですから!!」
「ムグ……」
そうこう言っている間に、西郷と銀時の交渉は決裂した。
「だから! 出ねぇっていってんだろ!!」
「もういっぺんかぶき町の恐ろしさ叩き込まれたいのかあ゛あ?!」
「知るか!!」
「チィッ!! ……ん? あら、そこの人見かけない顔ね?」
「は?」
ターゲットを銀時から外した西郷は、新八の隣にいる阿伏兎に狙いを定めていた。
「なっ……阿伏兎逃げッ!!」
「少し黙ってろ」
ゴスッ、と西郷に机に顔を埋め込まれた銀時は、ピクリとも動かなくなった。
その様子に新八は絶句し、阿伏兎はどうするべきかと悩んだ。
「ん~、なかなかいい体ね」
「はぁ……」
ペタペタと触る自分と同じ目線の西郷に、阿伏兎は気の抜けた返事しか返せなかった。
どう見てもオッサン顔に化粧をしている西郷に対し、本当にどうすれば良いのかが分からなかった。
「足も綺麗だし、何より色白ね」
夜兎の体質により確かに白いと言えば白いが、何を確認しているのかがさっぱり分からない。
疑問符しか頭にあがらない阿伏兎の肩に手をポンと置き、西郷は笑った。
「じゃ、いきましょうか」
声をかけた西郷は、軽々と阿伏兎を抱え上げ、肩へと担いだ。
一連のやり取りが終わる頃になると、新八は慌てて銀時を起こしにかかった。
「銀さん、銀さん! 銀さァアアん!! 起きてください早く!! 失神してる場合じゃないですよ! 阿伏兎さんが連れてかれちゃいますよォオオオ!!!」
「んー、いってぇー……はっ!? 阿伏兎!!」
「仕方ないわねパー子、代わりにこの子を連れてくわ」
明らかに状況の分かっていない阿伏兎は、さしたる抵抗もできず、西郷に担がれたまま万事屋を出た。
その後、人1人担いでいるとは思えない速さで西郷は走り去った。
「あっはぁん! この引き締まった足とお尻が堪らないわぁ!!」
「ッ!? おい、何処を触ってる!!」
「いやぁん! 肌も凄く色白で滑らかよ!?」
「やめろ!!」
ハァハァと荒い息遣いで、舐めずらんばかりに品定めをするかまっ娘倶楽部のオカマ達。
必死に逃げようとする阿伏兎だったが、多勢に無勢。
その上、青髭の上に化粧を塗った集団に、思考が鈍くなり行動にキレが無くなっていた。
「ママ、よく見つけてきたわね」
「パー子の所から連れてきたのよ。さ、早く準備しちゃって」
「「「は~い」」」
軽やかに返事をするオカマ達の目は、草食動物を狩る肉食獣の目だった。
あずみと西郷が傍観する中、ドタバタと店内を駆け巡るオカマ達はついに阿伏兎の服へと手をかけた。
「阿伏兎ォオオ!!」
かまっ娘倶楽部の入り口を蹴破る勢いで開けた銀時。
視界に入ってきたものに衝撃を受けたように仰け反った。
「ぐはっ!」
「何やってるんですか銀さん!!」
「何やってるネ、銀ちゃん! 邪魔アル!!」
仰け反る銀時を払い除け、中を見た神楽と新八は銀時が衝撃を受けた理由を知った。
「阿伏兎! 今助けるネ!!」
「まだ大丈夫ですか阿伏兎さん!?」
上着を剥ぎ取られ、今まさに女物の着物をあてられそうになっている阿伏兎へと神楽達は駆け寄った。
不意打ちの事に鼻血を出しかけた銀時が思考を回復する頃には、神楽と新八が阿伏兎を救出している途中だった。
「あら、やっぱり助っ人に来てくれたのねパー子」
西郷は連れ出されそうな阿伏兎を早々に諦め、銀時に狙いを定めるようジェスチャーで促した。
「ちょっ!?」
襲い掛かるオカマ達。
ピラニアの群れに入れられた肉塊のごとく銀時は服を剥ぎ取られた。
「か、神楽! 新八! ちょっ助け…!」
「銀ちゃん……銀ちゃんの犠牲は無駄にしないネ」
「えっ…?」
「銀さん、阿伏兎さんは僕達が責任を持って万事屋に連れて行きます」
涙を堪える仕種をする神楽と新八。
銀時にかける言葉は、戦地へと赴く人物を見送るような響きがあった。
「エッ……オィイイイイ!?」
一目散に阿伏兎を連れ逃げた神楽と新八に、銀時の叫びは届かなかった。
後日、阿伏兎のもとへ神威から電話がかかって来たのは別の話。
強制依頼
『阿伏兎……もう少し付き合う相手考えた方が良いんじゃない?』
「言うな、団長。旦那は勇敢だった……」
『女装してたけど?』
end
(2010/11/24)
「おいおい、冗談は顔だけにしとけよ。誰が全宇宙版の紹介に醜態晒すかよ」
マドマーゼル西郷の頼みを断る銀時。
その様子を見ていた阿伏兎は、隣にいる新八に質問した。
「あれは天人か?」
「あはは……言わない方が良いですよ、特に西郷さんの前では……」
「いや……どう見ても化」
け物だろ、と続けようとした阿伏兎の口を必死に新八は押さえた。
「だからダメです! その言葉は禁句なんですから!!」
「ムグ……」
そうこう言っている間に、西郷と銀時の交渉は決裂した。
「だから! 出ねぇっていってんだろ!!」
「もういっぺんかぶき町の恐ろしさ叩き込まれたいのかあ゛あ?!」
「知るか!!」
「チィッ!! ……ん? あら、そこの人見かけない顔ね?」
「は?」
ターゲットを銀時から外した西郷は、新八の隣にいる阿伏兎に狙いを定めていた。
「なっ……阿伏兎逃げッ!!」
「少し黙ってろ」
ゴスッ、と西郷に机に顔を埋め込まれた銀時は、ピクリとも動かなくなった。
その様子に新八は絶句し、阿伏兎はどうするべきかと悩んだ。
「ん~、なかなかいい体ね」
「はぁ……」
ペタペタと触る自分と同じ目線の西郷に、阿伏兎は気の抜けた返事しか返せなかった。
どう見てもオッサン顔に化粧をしている西郷に対し、本当にどうすれば良いのかが分からなかった。
「足も綺麗だし、何より色白ね」
夜兎の体質により確かに白いと言えば白いが、何を確認しているのかがさっぱり分からない。
疑問符しか頭にあがらない阿伏兎の肩に手をポンと置き、西郷は笑った。
「じゃ、いきましょうか」
声をかけた西郷は、軽々と阿伏兎を抱え上げ、肩へと担いだ。
一連のやり取りが終わる頃になると、新八は慌てて銀時を起こしにかかった。
「銀さん、銀さん! 銀さァアアん!! 起きてください早く!! 失神してる場合じゃないですよ! 阿伏兎さんが連れてかれちゃいますよォオオオ!!!」
「んー、いってぇー……はっ!? 阿伏兎!!」
「仕方ないわねパー子、代わりにこの子を連れてくわ」
明らかに状況の分かっていない阿伏兎は、さしたる抵抗もできず、西郷に担がれたまま万事屋を出た。
その後、人1人担いでいるとは思えない速さで西郷は走り去った。
「あっはぁん! この引き締まった足とお尻が堪らないわぁ!!」
「ッ!? おい、何処を触ってる!!」
「いやぁん! 肌も凄く色白で滑らかよ!?」
「やめろ!!」
ハァハァと荒い息遣いで、舐めずらんばかりに品定めをするかまっ娘倶楽部のオカマ達。
必死に逃げようとする阿伏兎だったが、多勢に無勢。
その上、青髭の上に化粧を塗った集団に、思考が鈍くなり行動にキレが無くなっていた。
「ママ、よく見つけてきたわね」
「パー子の所から連れてきたのよ。さ、早く準備しちゃって」
「「「は~い」」」
軽やかに返事をするオカマ達の目は、草食動物を狩る肉食獣の目だった。
あずみと西郷が傍観する中、ドタバタと店内を駆け巡るオカマ達はついに阿伏兎の服へと手をかけた。
「阿伏兎ォオオ!!」
かまっ娘倶楽部の入り口を蹴破る勢いで開けた銀時。
視界に入ってきたものに衝撃を受けたように仰け反った。
「ぐはっ!」
「何やってるんですか銀さん!!」
「何やってるネ、銀ちゃん! 邪魔アル!!」
仰け反る銀時を払い除け、中を見た神楽と新八は銀時が衝撃を受けた理由を知った。
「阿伏兎! 今助けるネ!!」
「まだ大丈夫ですか阿伏兎さん!?」
上着を剥ぎ取られ、今まさに女物の着物をあてられそうになっている阿伏兎へと神楽達は駆け寄った。
不意打ちの事に鼻血を出しかけた銀時が思考を回復する頃には、神楽と新八が阿伏兎を救出している途中だった。
「あら、やっぱり助っ人に来てくれたのねパー子」
西郷は連れ出されそうな阿伏兎を早々に諦め、銀時に狙いを定めるようジェスチャーで促した。
「ちょっ!?」
襲い掛かるオカマ達。
ピラニアの群れに入れられた肉塊のごとく銀時は服を剥ぎ取られた。
「か、神楽! 新八! ちょっ助け…!」
「銀ちゃん……銀ちゃんの犠牲は無駄にしないネ」
「えっ…?」
「銀さん、阿伏兎さんは僕達が責任を持って万事屋に連れて行きます」
涙を堪える仕種をする神楽と新八。
銀時にかける言葉は、戦地へと赴く人物を見送るような響きがあった。
「エッ……オィイイイイ!?」
一目散に阿伏兎を連れ逃げた神楽と新八に、銀時の叫びは届かなかった。
後日、阿伏兎のもとへ神威から電話がかかって来たのは別の話。
強制依頼
『阿伏兎……もう少し付き合う相手考えた方が良いんじゃない?』
「言うな、団長。旦那は勇敢だった……」
『女装してたけど?』
end
(2010/11/24)