断片話

◆幼児化


目が覚めて真っ先にピンク色の髪が見えた。
そこまでは許容範囲内。一本だけ生えたアホ毛も見慣れたものだった。
人の布団に潜り込むように包まっている人物を起こすべく、布団を剥ぎ取り声をかけようとして、止まった。
剥ぎ取った布団の中身は予想よりもはるかに小さかった。
さらにソレはどこか見覚えのある過ぎる顔立ちだった訳で……

「……団長の隠し子か?」

んなアホな、と内心でツッコミを入れるが、否定は出来なかった。
まだ自分は寝ぼけているのだと、頭を振り、目を擦るが状況は変わらず。
ベタな夢オチを願い、頬をつねれば痛かった。
辺りを探っても特にドッキリ企画でした、と言う隠しカメラもない。
神威の姿が見えないことから、隠し子を押し付け説と、もう一つ……できれば合っていてほしくない説が頭に浮かんだ。

「おはよう、阿伏兎。何やってるの?」

子供特有の高い声と、人を舐めきった口調。
合っていてほしくない説が的中した瞬間だった。

「おはようございます、団長様。で? 何があれば若返りなんてものができるんですかねぇ」


(2011/05/16)
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