断片話

◆鬼ごっこ

「そろそろ此処も潮時か」

軽く自嘲気味に笑いながら男は扉へと向かった。
強い日差しを遮断するよう番傘を広げ、外へと出た。

「今回は随分と短かったな」

まだ住み慣れてもいない家。
二度と戻ってくる事のない場所へと男は視線を向けた。
次の場所を考えながら、何とも面倒な生活かと考えた。

「たく、うちの団…いや、提督様は諦めるという言葉を知らんのか?」

肩をすくめ、男はあきれ混じりに呟いた。

「さて、次は何処の星に行こうかねぇ」

跛を引く男は、その事をさして気にもとめず乾いた砂の大地を歩きはじめた。

「ようやく見つけたよ、阿伏兎」

どこかで疲れていたのかもしれない。
もしくは、無自覚な部分で手を抜いていたのかもしれない。
いつまでも続く訳はない鬼ごっこ。
扉の外にいた人物を前に、阿伏兎は苦笑するように出迎えた。

「これはこれは、提督様。こんな所に何の用ですかねぇ?」


(2011/05/03)
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