断片話
◆初任
春雨に来ていくつか分かった事があった。
一つ目は、夜王鳳仙が幼い神威に世渡り上手なパートナーを探させていた理由。
二つ目は、今になって神威が優秀な補佐を欲しがっていた理由。
いずれにしても結論から言うと、神威に常識的な配慮が無い事に起因するらしい。
■
一番初めに案内された部屋に広がるのは、書類の山だった。
「ちょっと待て、何だこの白い山は」
「言っただろ? 世渡り上手で優秀な補佐が必要な状況だって」
「いやいや、この量はないだろ。いくら肉弾戦派の夜兎族がいっぱいでも書類を処理できない奴らばかりでもないだろ」
「いるよ? 処理できる奴も。ほら、あそこにいるのが云業」
指し示す方向には書類だらけの机に突っ伏している人物。
「屍か?」
「まだ生きてるよ」
ケラケラと笑いながら近づいた神威は云業をつついた。
ピクリと反応をした云業はペンを握り締めたまま、起きる様子はなかった。
「そうだ、この後会議があるんだけど、来て早々だから阿伏兎は見学だけにしておく?」
「……そうだな」
世渡り以前に常識を求める事自体が悪いのかと、春雨に来て早々頭が痛くなった。
(2011/03/22)
春雨に来ていくつか分かった事があった。
一つ目は、夜王鳳仙が幼い神威に世渡り上手なパートナーを探させていた理由。
二つ目は、今になって神威が優秀な補佐を欲しがっていた理由。
いずれにしても結論から言うと、神威に常識的な配慮が無い事に起因するらしい。
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一番初めに案内された部屋に広がるのは、書類の山だった。
「ちょっと待て、何だこの白い山は」
「言っただろ? 世渡り上手で優秀な補佐が必要な状況だって」
「いやいや、この量はないだろ。いくら肉弾戦派の夜兎族がいっぱいでも書類を処理できない奴らばかりでもないだろ」
「いるよ? 処理できる奴も。ほら、あそこにいるのが云業」
指し示す方向には書類だらけの机に突っ伏している人物。
「屍か?」
「まだ生きてるよ」
ケラケラと笑いながら近づいた神威は云業をつついた。
ピクリと反応をした云業はペンを握り締めたまま、起きる様子はなかった。
「そうだ、この後会議があるんだけど、来て早々だから阿伏兎は見学だけにしておく?」
「……そうだな」
世渡り以前に常識を求める事自体が悪いのかと、春雨に来て早々頭が痛くなった。
(2011/03/22)