断片話

◆外出


淀みなく進んでいたペンは、書類の端まで進みピタリと止まった。
暫く止まったペンはコロリと机の上を転がった。

「こんなもんかねぇ」

仕上がった書類を眺め、阿伏兎はつぶやいた。
何十枚となく積まれた処理済の書類。
その山の一番上に出来上がったばかりの書類を置き、座ってばかりいた体をのばした。
いつものごとく戦闘以外の仕事を部下へと放り投げる神威は、早々に書類作成を押し付け、一人でベッドへと横になり寝ている。

「まったく、のんきな顔で寝てやがる」

殴りたくなるほど清々しく寝ている神威の顔を見て、やれやれ、とため息をついた。
やる事もなく、静かな部屋の中から外を眺めていたが、おもむろに立ち上がり、いつものマントを左肩に引っ掛け、傘を腰に差し込み、神威を起こさないように、静かに外へと足を進めた。


(2011/03/06)
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