銀阿

「地球でも最近は人と会う時にはハグ、とやらをするのが流行ってるのか?」
「えっ?」

真顔で問われたのは、それ、何処の常識?と問い返したくなる流行。
聞き返すように銀時の口から出た言葉に、阿伏兎はその反応だと流行ってはいないのかと自己判断した。


「えーっと、ハグされんの? 最近?」
「いや……どうやら春雨内での流行りらしくてな、特にうちの団長含め、各師団長がやってくる」
「ぐはっ…!?」

思わず吐血をせんばかりの勢いで絶句した銀時。
ハグが流行っているのは春雨内だけかと、流行とやらは宇宙共通ではないようだと納得した阿伏兎。


「騙されてる、騙されてるよそれェエエ!?」
「何をそんなに慌ててるんだ? 旦那」
「絶ッッ対に騙されてる! どんぐらいの頻度でハグされてんの!?」
「たいていは出会い頭に一回、団長に関しては……数え切れないぐらいか?」

記憶を手繰るように銀時の問いに答える阿伏兎、銀時の慌てぶりの意味が分かっていなかった。


「おぃいい! 何それッ、春雨は狼の集団ですかァアア!?」
「狼っぽいのは第八師団長ぐらいだと思うが」
「ちがっ……別の意味で!! えっ、何これ? 純粋培養? 純粋培養なの、これ!? ハグされても流行で納得させられるって、どんだけ騙されてんの普段!?」
「銀時の旦那、何をそんなに混乱しているんだ?」
「気付いてェエエ! 気付いてこれ! ハグってようするに抱きつく行為だから! 普通そんなにハグなんてしないから!!」

肩を掴み、必死に訴える銀時に、今春雨で流行っているのは、少しばかり世間とはずれているらしいと阿伏兎は納得した。



世間ズレ
「ようするに、世間離れした流行か?」
「ある意味そうだけど、騙されてるよこの人ォオオオオ!!」


end
(2010/07/24)
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