断片話

◆ハート型


「阿伏兎ー、あげる」
「……団長。それは此方の目が正常であればチョコですかねぇ?」

差し出された特大ハートチョコ。別段用意はしていなかったが、やらんといかんだろうなと思っていた矢先の事だった。

「ホワイトデーは3倍返しだよ」
「それでか……」

たしかに、特大チョコの3倍返しは高くつく。

「まぁ、目先の利益に囚われない立派な考え方か……」

受け取ったチョコを食べやすくするために力を加えながら呟いた。パキリと軽い音を立てて割れたハート型チョコ。当然のように半分を神威に渡そうとして、首を傾げた。

「どうかしたか、団長?」
「阿伏兎……もう少し考えて分けない?」
「食えれば一緒だろ?」
「うん、そうだけどね。縦半分の方が割りやすかったかもしれないけどね」


(2011/02/14)
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