断片話

◆雪降り


搭乗口で神威を待っていた阿伏兎は呆れ顔で迎えた。

「団長、せめて番傘に乗った雪は落とせ。船内を水浸しにする気か?」
「それが上司を迎える態度?」
「はいはい。雪の中敵陣に一人で乗り込みとてもお疲れ様ですよ、団長様」
「……何で怒ってるの?」
「さあ? 何でですかね。例えるなら雪兎よろしく勝手に飛び出した人物のせいですか?」
「ああ、なるほど。心配してくれてたんだ」
「どう意味を取り違えればそうなるんだ、このすっとこどっこい」

「阿伏兎、人の体を温めるのって人肌が一番なんだって」

キラキラと輝かんばかりの笑みで言う神威。その言葉にそこはかとなく嫌な予感がしながら、阿伏兎は聞き返した。

「で、何が言いたいんですかねぇ? 団長」
「あっためろよ。阿伏兎」

ピタリと冷え切った手を、阿伏兎の首筋へと当てた。


(2011/02/11)
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