断片話

◆賭け事
(華陀+阿伏兎)

「どうじゃ、一つ賭けをしてみないか?」

孔雀扇をゆるくあおぎながら何気なく言われた言葉。
艶やかな笑みを向けてくる相手に対し、口が引きつりそうになった。

「ご冗談を、第四師団長様」
「ふっ……負けるのが怖いか? それとも、勝つのがか?」
「いえいえ、貴方様が勝つことが始めから分かっている勝負に手を出すほど、こちらは馬鹿ではありません」
「何を言う。賭け事は平等じゃ。もっとも、運命の女神とやらは気まぐれじゃが」

単なる暇つぶしの余興じゃ、と言う相手に敵う訳がないと再度思った。


(2011/02/05)
11/98ページ