かむあぶ 2

「死腐土星の特産物が来るのが遅いから脅してでもとってこいとか、平和的じゃないよね」
「平和的ねぇ……ついさっき暴力で制圧したアンタが言う台詞か?」
「肩慣らしにもならなかったね」

暴力と言う名の交渉を済ませた後、こころよく出された特産物の積荷。
現在は検収を進めている部下達のかたわら、神威は特産物を一つ手に取っていた。

「それで? これが特産物で合ってるの?」
「ああ、そうだな」
「巨大カタツムリ?」
「いや、確か海産物の一種で名は…――ッ?!」

眺めていた貝殻から唐突に、肉棒状の中身が勃起し。
ビュッと音がしそうなほどの勢いで白濁の粘液を吐き、阿伏兎の顔を汚した。
顔に射出された生臭く粘つく物体の不快感に眉間のシワを深くし。
手の甲でぞんざいに拭いながら阿伏兎は悪態をついた。

「くそッ! タコかイカのスミ吐きかァ!?」
「……せーの」
「って、オイオイ待て待て! 団長! 積荷を破壊しようとするな!!」

綺麗な投石フォームで手にしていた貝を振りかぶろうとしていた神威に待ったをかけ。
かけられた粘液をまともに拭う暇すらなく、阿伏兎は上司の説得に苦心した。

「阿伏兎。この汚物が本当に特産物? わいせつ物の間違いじゃない?」
「だから、名はチコン貝と言って。形状はアレだがとんでもなく値がはる高級珍味だ」
「チコン貝って言うよりチ〇コ貝だよね? やっぱり破壊しとこうよ」
「上のじじい共の食事会に使われる予定のだから破壊だけはマジで止めて」
「食事会用か。じゃあ、粗挽きウィンナー風にしても問題ないよね」
「よくねーよ、問題ありまくりだからね」



シェルフィッシュの逆襲
「何か船中がイカ臭くなった気がするね、運んでるの貝なのに」
「検収中に粘液を引っかけられる事故が多発したからな……」


end
(2019/04/15)
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