かむあぶ 2
「おかえり阿伏兎。どうしたのソレ? 新手のプレイ?」
「何をどう見れば、これが新手のプレイに見えるんで?」
「どうって言われても、自分から目隠ししてるからSMプレイでもしたいのかなって」
「勘違いするな、団長。これは少し出先でヘマやらかして、応急処置で付けてるだけだからな」
「俺そっち系に興味あんまりないんだけど、阿伏兎が興味あるなら付き合うよ?」
「人の話を聞け!」
話が進まんだろと怒鳴りつけた阿伏兎は、手探り状態で神威の近くへと座り込んだ。
「で、応急処置って何? 目でもやられたの?」
「まぁ、目をやられたと言えばやられたな」
「早めに医務室に行ったら?」
「さっき行った帰りだ」
「ふーん。全治何日?」
「さてなぁ、愛染香の効果が切れるまで、だろうな」
「愛染香? ……あー、あの惚れ薬、まだあったんだ」
埃を被りまくった昔の記憶から思い出した神威は、感心したように呟いた。
興ざめもいい所の惚れ薬の効果なら、師匠であった鳳仙から聞いたことがあった。
地球の吉原では御禁制となった秘薬として、一時期は春雨でも取り扱っていたらしいが。
取り扱いに極めて注意が必要なことから、現在では見かける事はほとんどなくなった。
「とっくにカビが生えてる代物だと思ってたけど?」
「今回の出先じゃ、現役バリバリに使われてたぜ」
「で、間抜けにも阿伏兎はソレを吸っちゃった訳だ」
「手厳しい意見で」
「それで? いつこの目隠しは取れる予定なの?」
「解毒薬の愛断香とやらの在庫が見つかりしだいだな」
「そう、それまで阿伏兎はずっと誰に惚れるか分からない状態が続くんだ」
引けば解けるほど緩く結んだ訳でもない目隠しの結び目。
その布の端をもてあそぶ様に指先に絡めながら神威は口を開いた。
「ねぇ、阿伏兎。いっその事、目隠しを取って俺を見ない?」
「断る。何が悲しくて理性の欠片もない状態になりたがるバカがいるか」
「誰に惚れるか分からない状況が続くぐらいなら、俺に惚れた方が早いだろ」
「思わん。いい加減、布から手を離せ。団長」
相手が触れてくる頻度の高さに、阿伏兎は身動ぎをした。
見えない分神経を尖らせている中、触れられるのは居心地が悪い。
何を考えているのかと目隠しの下で眉間にシワを寄せた。
「団長。あんたまさか、布についてた残り香にやられたなんて事は……」
「残り香程度の惚れ薬に、俺がやられたとでも?」
心外だと言わんばかりの口調の神威は、布の端に口付けてから反論した。
「そんなものなくても、俺はとっくに阿伏兎に惚れてるよ」
惚れる病に薬あり
「誰か! 大至急団長を医務室に叩き込め!!」
「正常だって言ってるだろ。それよりほら、早く目隠し取ろうよ、阿伏兎」
end
(2019/04/11)
「何をどう見れば、これが新手のプレイに見えるんで?」
「どうって言われても、自分から目隠ししてるからSMプレイでもしたいのかなって」
「勘違いするな、団長。これは少し出先でヘマやらかして、応急処置で付けてるだけだからな」
「俺そっち系に興味あんまりないんだけど、阿伏兎が興味あるなら付き合うよ?」
「人の話を聞け!」
話が進まんだろと怒鳴りつけた阿伏兎は、手探り状態で神威の近くへと座り込んだ。
「で、応急処置って何? 目でもやられたの?」
「まぁ、目をやられたと言えばやられたな」
「早めに医務室に行ったら?」
「さっき行った帰りだ」
「ふーん。全治何日?」
「さてなぁ、愛染香の効果が切れるまで、だろうな」
「愛染香? ……あー、あの惚れ薬、まだあったんだ」
埃を被りまくった昔の記憶から思い出した神威は、感心したように呟いた。
興ざめもいい所の惚れ薬の効果なら、師匠であった鳳仙から聞いたことがあった。
地球の吉原では御禁制となった秘薬として、一時期は春雨でも取り扱っていたらしいが。
取り扱いに極めて注意が必要なことから、現在では見かける事はほとんどなくなった。
「とっくにカビが生えてる代物だと思ってたけど?」
「今回の出先じゃ、現役バリバリに使われてたぜ」
「で、間抜けにも阿伏兎はソレを吸っちゃった訳だ」
「手厳しい意見で」
「それで? いつこの目隠しは取れる予定なの?」
「解毒薬の愛断香とやらの在庫が見つかりしだいだな」
「そう、それまで阿伏兎はずっと誰に惚れるか分からない状態が続くんだ」
引けば解けるほど緩く結んだ訳でもない目隠しの結び目。
その布の端をもてあそぶ様に指先に絡めながら神威は口を開いた。
「ねぇ、阿伏兎。いっその事、目隠しを取って俺を見ない?」
「断る。何が悲しくて理性の欠片もない状態になりたがるバカがいるか」
「誰に惚れるか分からない状況が続くぐらいなら、俺に惚れた方が早いだろ」
「思わん。いい加減、布から手を離せ。団長」
相手が触れてくる頻度の高さに、阿伏兎は身動ぎをした。
見えない分神経を尖らせている中、触れられるのは居心地が悪い。
何を考えているのかと目隠しの下で眉間にシワを寄せた。
「団長。あんたまさか、布についてた残り香にやられたなんて事は……」
「残り香程度の惚れ薬に、俺がやられたとでも?」
心外だと言わんばかりの口調の神威は、布の端に口付けてから反論した。
「そんなものなくても、俺はとっくに阿伏兎に惚れてるよ」
惚れる病に薬あり
「誰か! 大至急団長を医務室に叩き込め!!」
「正常だって言ってるだろ。それよりほら、早く目隠し取ろうよ、阿伏兎」
end
(2019/04/11)