かむあぶ 2
宇宙船の吹き抜けのホールが巨大竹の群生地となり。
酒、女、金、と欲望に忠実な願いが書かれた紙切れが吊るされる。
これと言って誰かが言い出した訳でもないが毎年そうなる、そんな行事だった。
毎年のことながら壮観の一言に尽きる光景を見下ろし。
先ほどから手すりに腰掛けてホールを眺めている上司へと阿伏兎は視線を移した。
「あんたはもう書いて吊るしたのか、団長?」
「まだだよ。そう言う阿伏兎は?」
「こっちもまだ書いちゃいないな。特に書く予定もないが」
「何だ、もう書いて吊るしてるなら見つけようと思ったのに」
「なおさら書けるか!」
「じゃあ、俺と阿伏兎で連名の短冊でも書いとく?」
「はぁ? 連名だと?」
「思い立ったが吉日って言うし、さっそく書いて来るね」
言うが早いか手すりから飛び降り、ホールにある短冊置場に神威は向かい。
短冊の連名など聞いたことがないぞと思いながら、阿伏兎は上司の行動を眺めた。
「ほら、俺と阿伏兎の連名の短冊」
「…………」
ホールから巨大竹を足掛かりに軽やかに戻ってきた神威。
その手にある短冊の内容に、連名とはそう言う事かと阿伏兎は口元を引きつらせた。
「一番上に飾っておくね」
「おいッ…! 待て、団長!!」
短冊を取り上げる隙すらなく、早々に巨大竹の頂上を目指す神威。
こういう時ばかりいやに行動力のある上司に、阿伏兎は天を仰いだ。
笹の葉さらさら
相合傘マークの短冊もゆれる。
end
(2018/07/17)
酒、女、金、と欲望に忠実な願いが書かれた紙切れが吊るされる。
これと言って誰かが言い出した訳でもないが毎年そうなる、そんな行事だった。
毎年のことながら壮観の一言に尽きる光景を見下ろし。
先ほどから手すりに腰掛けてホールを眺めている上司へと阿伏兎は視線を移した。
「あんたはもう書いて吊るしたのか、団長?」
「まだだよ。そう言う阿伏兎は?」
「こっちもまだ書いちゃいないな。特に書く予定もないが」
「何だ、もう書いて吊るしてるなら見つけようと思ったのに」
「なおさら書けるか!」
「じゃあ、俺と阿伏兎で連名の短冊でも書いとく?」
「はぁ? 連名だと?」
「思い立ったが吉日って言うし、さっそく書いて来るね」
言うが早いか手すりから飛び降り、ホールにある短冊置場に神威は向かい。
短冊の連名など聞いたことがないぞと思いながら、阿伏兎は上司の行動を眺めた。
「ほら、俺と阿伏兎の連名の短冊」
「…………」
ホールから巨大竹を足掛かりに軽やかに戻ってきた神威。
その手にある短冊の内容に、連名とはそう言う事かと阿伏兎は口元を引きつらせた。
「一番上に飾っておくね」
「おいッ…! 待て、団長!!」
短冊を取り上げる隙すらなく、早々に巨大竹の頂上を目指す神威。
こういう時ばかりいやに行動力のある上司に、阿伏兎は天を仰いだ。
笹の葉さらさら
相合傘マークの短冊もゆれる。
end
(2018/07/17)