かむあぶ 2
どうしてこうなったのか。
目の前で睨み合う二人の兄妹を前に、阿伏兎は遠い目をした。
「バカ兄貴は寂しがり屋アルか。恋人と片時も離れたくないなんて何処のヤンデレアルか」
「失礼な言い方だね。お兄ちゃんの職場は虫が付きやすいんだ、離れたくないって思って何が悪いのかな?」
「ふん、束縛が激しい男なんてうざいだけネ」
「別に束縛なんてしてないけど?」
事の始まりは何だったかと問えば。
上司に対する愚痴を、世間話ついでにその妹に少し話したからだった。
その愚痴の内容が、上司のスキンシップ過多による寝不足についてだったのが悪かったのだろう。
人様に迷惑をかける兄に堪忍袋の緒が切れた妹は、その足で兄の元までばく進し。
そして現在にいたる。
思い返してみても、自分の言動がうかつだったと阿伏兎は悔いた。
寝不足から判断力が低下していたと今では思う。
しかし、このまま兄妹喧嘩が勃発すれば周囲への被害は計り知れない。
ため息を吐いてから、仲裁に入る覚悟を決めた。
「おい、団長、嬢ちゃん。兄妹喧嘩はそこら辺に……」
「待ってるアル阿伏兎。今からこのバカからの束縛に終止符を打ってやるネ」
「阿伏兎。こんな出来の悪い妹の戯言なんかに耳を貸さなくていいよ」
「……聞いちゃいねーな」
「おはようからおやすみまで、四六時中一緒に過ごさないと満足できないような。恋愛観が破綻してる兄に、妹の私が遠距離恋愛のえの字を教えてやるヨ」
「人の話を聞かない妹だね。あんまり人の恋愛に口出しするなら――殺しちゃうぞ」
「やってみろヨ。阿伏兎の安眠は私が取り戻すアル」
「阿伏兎の安眠は俺がいてこそだから」
バチバチと双方の間で火花が散り。
兄妹喧嘩の火蓋が切られようとする中。
すっかりと蚊帳の外となった阿伏兎は、無言で首を振った。
「覚悟するネ! バカ兄貴!!」
「お兄ちゃんに勝てるとでも?」
第n次兄妹喧嘩
『まぁ、嬢ちゃんの方を若干応援したくなったのは、言わぬが花だろうな』
end
(2015/12/02)
目の前で睨み合う二人の兄妹を前に、阿伏兎は遠い目をした。
「バカ兄貴は寂しがり屋アルか。恋人と片時も離れたくないなんて何処のヤンデレアルか」
「失礼な言い方だね。お兄ちゃんの職場は虫が付きやすいんだ、離れたくないって思って何が悪いのかな?」
「ふん、束縛が激しい男なんてうざいだけネ」
「別に束縛なんてしてないけど?」
事の始まりは何だったかと問えば。
上司に対する愚痴を、世間話ついでにその妹に少し話したからだった。
その愚痴の内容が、上司のスキンシップ過多による寝不足についてだったのが悪かったのだろう。
人様に迷惑をかける兄に堪忍袋の緒が切れた妹は、その足で兄の元までばく進し。
そして現在にいたる。
思い返してみても、自分の言動がうかつだったと阿伏兎は悔いた。
寝不足から判断力が低下していたと今では思う。
しかし、このまま兄妹喧嘩が勃発すれば周囲への被害は計り知れない。
ため息を吐いてから、仲裁に入る覚悟を決めた。
「おい、団長、嬢ちゃん。兄妹喧嘩はそこら辺に……」
「待ってるアル阿伏兎。今からこのバカからの束縛に終止符を打ってやるネ」
「阿伏兎。こんな出来の悪い妹の戯言なんかに耳を貸さなくていいよ」
「……聞いちゃいねーな」
「おはようからおやすみまで、四六時中一緒に過ごさないと満足できないような。恋愛観が破綻してる兄に、妹の私が遠距離恋愛のえの字を教えてやるヨ」
「人の話を聞かない妹だね。あんまり人の恋愛に口出しするなら――殺しちゃうぞ」
「やってみろヨ。阿伏兎の安眠は私が取り戻すアル」
「阿伏兎の安眠は俺がいてこそだから」
バチバチと双方の間で火花が散り。
兄妹喧嘩の火蓋が切られようとする中。
すっかりと蚊帳の外となった阿伏兎は、無言で首を振った。
「覚悟するネ! バカ兄貴!!」
「お兄ちゃんに勝てるとでも?」
第n次兄妹喧嘩
『まぁ、嬢ちゃんの方を若干応援したくなったのは、言わぬが花だろうな』
end
(2015/12/02)